自然妊娠経過中にうっ血性心不全を呈した長期血液透析患者の1例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
症例は38歳の女性.IgA腎症による末期腎不全に対して16年前より近医で維持血液透析を行っていた.自然妊娠が判明し妊娠20週より当院入院管理となった.入院後1回4時間,週6日の血液透析を行い透析前血中尿素窒素(BUN)50 mg/dL以下に保った.目標体重(dry weight:DW)は,下大静脈径,ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP),羊水量を指標に,透析中の連続的ヘマトクリット測定(クリットライン<SUP>®</SUP>)による循環血液量の変化量(%BV)も参考として,妊娠経過に合わせて200~300 g/週の割合で上方修正した.妊娠28週頃よりhANP値の上昇を認め,DWの上方修正を100 g/週に減じていた.妊娠33週3日夜間に突然の呼吸困難が出現し,胸部X線写真にて心拡大と胸水貯留を,心臓超音波検査にてびまん性壁運動低下を認め,NYHA(New York Heart Association)IV度のうっ血性心不全と診断した.緊急帝王切開術を施行し生児を得た後,集中治療室で心不全治療を行い出産後24日で退院した.退院後DWを減量調整したが心機能は改善せず,血中異型プロラクチン(16 kDa)の存在とカテプシンD活性の上昇を認めたため,周産期心筋症と診断された.出産後2年以上が経過した現在も,駆出率25%と低下状態が遷延している.本症例は,慢性透析患者の妊娠管理において重要な知見を有する1例であると考えられる.
- 一般社団法人 日本透析医学会の論文
著者
-
金崎 雅美
滋賀医科大学内科学講座(内分泌代謝・腎臓・神経内科)
-
有村 徹朗
社会保険滋賀病院
-
宇津 貴
滋賀医科大学
-
一色 啓二
滋賀医科大学
-
一色 啓二
滋賀医科大学腎臓内科
-
小野 真也
滋賀医科大学腎臓内科
-
吉田 尚平
滋賀医科大学腎臓内科
-
信田 裕
滋賀医科大学腎臓内科
-
吉林 護
滋賀医科大学腎臓内科
-
桑形 尚吾
滋賀医科大学腎臓内科
-
出路 奈緒子
社会保険滋賀病院内科
-
宇津 貴
滋賀医科大学腎臓内科
-
金崎 雅美
滋賀医科大学腎臓内科
関連論文
- PR3-ANCA,MPO-ANCAともに陽性の半月体形成性糸球体腎炎に肺外リンパ節結核の関与が示唆された透析導入患者の1例
- 慢性血液透析患者におけるシナカルセトのJSDTガイドライン達成率への影響--びわこ臨床透析カンファレンス共同研究
- 摘出腫瘤の病理組織標本所見より頸椎腫瘍状石灰沈着症 (cervical tumoral calcinosis) と診断し得た維持透析患者の1例
- 壊疽切断肢にコレステロール塞栓症を認めた維持血液透析患者の1例
- たこつぼ型心筋障害を合併し集学的治療にて救命しえた急性腎不全の1例
- PR3-ANCA, MPO-ANCAともに陽性の半月体形成性糸球体腎炎に肺外リンパ節結核の関与が示唆された透析導入患者の1例
- 強皮症に合併したMPO-ANCAおよび抗GBM抗体陽性半月体形成性糸球体腎炎の1例
- ウイルス性髄膜脳炎発症後に低Na血症をきたした症例
- 慢性血液透析患者におけるシナカルセトのJSDTガイドライン達成率への影響 : びわこ臨床透析カンファレンス共同研究
- 著明な脾腫, 汎血球減少, 肝線維症を伴った常染色体優性遺伝多発性嚢胞腎の1例
- 慢性血液透析患者におけるシナカルセトのJSDTガイドライン達成率への影響 : ―びわこ臨床透析カンファレンス共同研究―
- 慢性腎臓病をきたす全身疾患-最近の進歩
- 子宮内胎児死亡,妊娠中毒症の既往のある抗リン脂質抗体症候群合併妊婦に対し,選択的抗体吸着療法を施行した症例
- 低体温, 糖尿病性ケトアシドーシス, 高カリウム血症となり著明なJ波増高を来たした2型糖尿病の一例
- C型肝炎ウイルス感染に合併したMPO-ANCA陽性 Wegener 肉芽腫症の1例
- 自然妊娠経過中にうっ血性心不全を呈した長期血液透析患者の1例