超好熱性アーキアThermococcus kodakarensis を用いた水素生産
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概要
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生物学的水素生産は次世代の再生可能燃料の生産方法として,大きな注目を集めている。超好熱性アーキアThermococcus kodakarensis KOD1は,嫌気性従属栄養微生物であり,その至適生育温度は85 °Cである。私たちは本菌の水素生産能力を評価するために,天然培地にピルビン酸もしくはデンプンが添加された培地を用いて培養実験を行った。ピルビン酸添加培地を用いた連続培養実験により,希釈率0.8 h−1の条件において,最大の連続的水素生産速度となる59.6 mmol g−1 h−1(乾燥菌体重量,単位時間あたり)を記録した。また本菌のゲノム上には3種類の[NiFe]型ヒドロゲナーゼの相同遺伝子(Hyh,Mbh,Mbx)が存在する。これらの[NiFe]型ヒドロゲナーゼの細胞内での機能を解析するために,これら相同遺伝子の遺伝子破壊株をそれぞれ作成した。その結果,Mbh破壊株においてのみ,水素発生代謝条件下での生育が観察されなくなった。さらに,Mbh破壊株では水素発生能力の欠損も観察されたことから,Mbhが本菌の水素発生に関わる最も主要な[NiFe]型ヒドロゲナーゼであることが判明した。一方で,Hyhは水素の吸収反応に関与することが明らかとなった。これらの結果より,Mbhの機能を強化し,Hyhの機能を欠損させることで,水素発生能力が向上した株が作成できることが期待される。
著者
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跡見 晴幸
京都大学大学院工学研究科
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金井 保
京都大学大学院工学研究科
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今中 忠行
立命館大学生命科学部
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金井 保
京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻
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今中 忠行
立命館大学・生命科学・生物工学・環境バイオテクノロジー
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