P3-10 ブレオマイシン誘発強皮症モデルマウスの線維化と免疫異常の病態における転写因子Fli1の役割についての検討
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概要
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全身性強皮症は血管障害と線維化を特徴とする原因不明の自己免疫疾患である.本症では転写因子Fli1の発現が恒常的に低下しており,皮膚線維芽細胞と血管内皮細胞の恒常的活性化に深く関与している.一方,Fli1+/−マウスでは強皮症を発症する上での基盤となる皮膚線維芽細胞の恒常的な活性化および皮膚小血管の機能異常と構造異常を再現できるが,強皮症の臨床症状は再現できない.今回我々は,Fli1の恒常的発現低下が強皮症を発症する上での疾病素因となっている可能性について検討するため,Fli1+/−マウスを用いブレオマイシン(BLM)誘発強皮症モデルマウスを作成し,その形質変化について検討した.Fli1+/−マウスでは野生型マウスと比較して,BLM刺激による真皮の肥厚が有意に亢進し,I型コラーゲン蛋白の発現量も有意に亢進した.Fli1+/−マウスの病変部皮膚では,BLM投与1週間の炎症期では,血管内皮細胞においてTh2/Th17に偏倚した炎症を誘導する細胞接着分子の発現変化が認められた.また,BLM投与4週間の硬化期では,皮膚線維芽細胞においてCTGFや潜在型TGF-βの活性化に重要なインテグリンαVβ3,αVβ5の発現が亢進しており,浸潤しているマクロファージではarginase-1陽性細胞の割合が有意に亢進していた.以上の結果より,Fli1の恒常的発現低下はBLM刺激に対して,様々な細胞において強皮症に特徴的な形質変化を促し,皮膚の強力な線維化を誘導することが明らかとなった.
著者
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浅野 善英
東京大学医学部皮膚科
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佐藤 伸一
東京大学医学部 皮膚科
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市村 洋平
東京大学医学部 皮膚科
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遠山 哲夫
東京大学医学部 皮膚科
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谷口 隆志
東京大学医学部 皮膚科
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高橋 岳浩
東京大学医学部 皮膚科
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野田 真史
東京大学医学部 皮膚科
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赤股 要
東京大学医学部 皮膚科
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浅野 善英
東京大学医学部 皮膚科
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