W7-1 生物学的製剤の臨床成績からみた関節リウマチの病態
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概要
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関節リウマチ(RA)の関節滑膜では,血管新生に伴うリンパ球やマクロファージの浸潤や,滑膜線維芽細胞の増殖を認め,これらの細胞からは多彩なサイトカインが産生される.サイトカインはRAの病態である血管新生,細胞浸潤,滑膜細胞増殖,骨破壊に密接に関与し,またサイトカイン産生細胞の活性化を介しさらにその産生を増幅する.ただし,何がその始まりなのかなど,病態の理解における未解決な点は多い.TNF-αやIL-6などのサイトカインやT細胞,B細胞を標的とした生物学的製剤は画期的な臨床効果をもたらしたが,これらの治療応用の結果は病態解明の視点でも示唆に富む.例えば,T細胞やB細胞を標的とした生物学的製剤を使用した場合に比し,TNF-αやIL-6を標的とした場合は臨床効果がプラトーに達するのが早いようである.そして骨破壊抑制の効果発現までの期間も,同様にサイトカイン阻害薬の方が早かった.このことからTNF-αやIL-6はリンパ球よりも下流に位置づけられることが読み取れる.また生物学的製剤の併用療法による相乗効果が否定されていることから,標的が異なる場合でも最終的には共通の経路を遮断する可能性が考えられる.さらにはIL-1阻害薬などの効果の乏しかった臨床試験の結果からも病態に関わる貴重な情報が得られる.これらは次の基礎研究への新しい糸口となり,病態解明や治療の進歩に更に結びつくものと期待される.
著者
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