合同シンポジウム2-3 多発性硬化症における脳脊髄液T細胞のケモカイン受容体解析
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概要
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多発性硬化症(Multiple Sclerosis : MS)は炎症性脱髄を特徴とする,代表的な中枢神経を場とする臓器特異的自己免疫疾患である.再発と寛解そして進行性の経過が一般的である.根本原因は不明であるがリンパ球を標的とした治療が有効である.MSの病理ではIFNγ産生性のTh1細胞とともにIL-17産生性のTh17細胞の病原性が示唆されているが,詳細は不明である. Th1細胞とTh17細胞は,異なるケモカイン受容体を発現するため,逆にケモカイン受容体の発現パターンからTh1/Th17細胞の関与を推定しうる.MS患者のCD4+T細胞におけるCCR2,CCR4,CCR5,CCR6の発現の有無をフローサイトメトリーで調べ,計16種の細胞分画(例えばCCR2+CCR4-CCR5-CCR6+など)の頻度を得た.末梢血CD4+T細胞における各分画の頻度はコントロールと比べて有意な変化を認めなかったが,再発期MS患者の脳脊髄液のCD4+T細胞を調べると,CCR2+CCR5+細胞の頻度が,末梢血中の頻度と比べ疾患特異的に増加していた.すなわち同細胞が中枢神経内に集積していることが示唆された.同細胞は活性化によりIFNγとIL-17の両者を産生し,また血液脳関門を通過し,脳・脊髄に浸潤しやすい性質をもつことが分かった.以上からMSの再発に関与する重要な細胞と考えられた. 複数のケモカイン受容体の発現の組み合わせを調べることにより,疾患に重要な細胞分画を明らかにすることが可能である.現在,他の神経疾患への応用を試みている.
- 日本臨床免疫学会の論文
著者
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三宅 幸子
(独)国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部
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佐藤 和貴郎
(独)国立精神・神経医療研究センター(NCNP)神経研究所 免疫研究部
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荒浪 利昌
(独)国立精神・神経医療研究センター(NCNP)神経研究所 免疫研究部
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冨田 敦子
Cleveland Clinic, Lerner Research Institute, Dept. of Neurosciences
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千原 典夫
Harvard Medical School, Department of Neurology
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岡本 智子
NCNP 多発性硬化症センター
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林 幼偉
(独)国立精神・神経医療研究センター(NCNP)神経研究所 免疫研究部
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村田 美穂
NCNP病院 神経内科
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山村 隆
(独)国立精神・神経医療研究センター(NCNP)神経研究所 免疫研究部
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山村 隆
(独)国立精神・神経医療研究センター神経研究所 免疫研究部
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