西南日本外帯の大崩山,豊栄鉱山,高隈山中新世花崗岩類の化学組成
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概要
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西南日本外帯に属し四万十帯北帯に貫入する中新世のチタン鉄鉱系火成岩類から,大崩山のリング岩脈3試料,大崩山花崗岩体21個,豊栄鉱山地区の花崗岩類8個,高隈山花崗岩体7個の化学分析を偏光蛍光X線分析装置によって実施した.これら火成岩類はその産状から貫入岩体浅成部を示しているものと考えられ,同じチタン鉄鉱系からなり深成部を代表する領家帯花崗岩類との比較は興味深く,次の結果を得た. 検討した西南日本外帯花崗岩類は,中部地方の領家帯花崗岩類と較べて次の成分で低い値を示す:Al2O3, Ba, CaO, Sr, A/CNK, P2O5, Zn とCr.一方,西南日本外帯花崗岩類は次の成分で中部地方の領家帯花崗岩類よりも高い値を示す:Gax10000/A, K2O, Rb, Pb, Na2O, MgO, TiO2, V, Y, La, Ce, Th, U, Nb, Ta, ZrとSn.これらの相違点は主としてマグマの源物質が異なるために発生した固有の性格と考えられる. 両地帯の花崗岩類の最も著しい相違点は,西南日本外帯花崗岩類の高シリカ花崗岩におけるRb, Pb, Y, Th, U などの著しい濃集にあって,これはマグマの結晶分化作用の程度の違いに起因するものと考えられる.ジルコンの飽和温度は,リング岩脈の斑岩で859℃(70.3% SiO2),大崩山岩体下部の花崗閃緑岩で774℃(68.4% SiO2),他方,最上部の優白花崗岩キャップでは750℃(74.8% SiO2)で少し低い.高隈山花崗岩体は主岩相で 738℃(73.8% SiO2),周辺部の優白花崗岩でやや低い695℃(76.3% SiO2)が得られ,共に産状と調和的である.高隈山花崗岩体は従来Sタイプと考えられていたが,レスタイト的なアルミナ珪酸塩鉱物を含まず,A/CNK は1.1 を越えず,K2O 含有量も少ないから,珪長質I タイプとみなす方が良いものと思われる.
著者
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石原 舜三
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
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Chappell Bruce
School of Earth & Environmental Sciences, University of Wollongong
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