チリ北部,カナダのハイランドバレー,モンゴルのエルデネット,中国の徳興,ブルガリアのメデット,日本の阿仁鉱山における鉱化関連花崗岩類の岩石化学的性質
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概要
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チリ北部の中生代-新生代花崗岩類を蛍光X線回折法で再分析すると共に,その他地域のポーフィリー型銅鉱床に関係する花崗岩類を同一方法で分析した.チリでは北部,中部,南部の3測線で海岸部(ジュラ紀)から内陸部(第三紀)に至る広域的花崗岩類試料が解析された.ハーカー図において内陸へ増加する傾向を示す成分はAl2O3,Na2O,P2O5 とSrである.他方,減少の傾向を示す成分はY,全鉄とVである.したがって,高いSr/Y比を持つ花崗岩類が内陸部の若い時代に産出することになる. 世界のその他の対象地域はカナダのB.C.州のハイランドバレー鉱床地域,モンゴルのエルデネット鉱床,中国の徳興鉱床,ブルガリアのメデット鉱床,日本の阿仁鉱床などである.研究した諸岩石は帯磁率測定とFe2O3 とFeOの分析により,全て磁鉄鉱系に属することが明白で,この酸化型マグマの存在は全鉱床で共通する性質である.アルミナ飽和指数(ASI)は1.1より小さく,したがってIタイプに属すると判定された.多くの花崗岩類はK2O-SiO2 図上で,高カリウム系列の領域にプロットされるが,ハイランドバレー地域の花崗岩類は低~中Kシリーズに属し,カリウムに乏しい.チリの一部とエルデネット花崗岩類が最もカリウムに富み,ショショナイトも産出する. その他の成分では,チリの花崗岩類はP2O5 に乏しい.ハイランドバレー鉱床とメデット鉱床の花崗岩類はRbが最低,Srが最大の含有量を持つ.花崗岩類中の微量のCu含有量は大きく変化するが,チリとハイランドバレー鉱床地域の花崗岩類にはその含有量が大きいものが多い.Moは花崗岩類中更に少量であるが,ハイランドバレー,エルデネット,チリの鉱床地域の花崗岩類には,SiO2 =60-65%の中性岩類において5ppm Moを越える高いものがある. ストロンチウムに富みYに乏しい花崗岩類がチリ,ハイランドバレー,徳興,メデット鉱床地域の鉱化花崗岩類にしばしば認められた.これはアダカイトと認定されるもので,その起源物質はまだ温かい海洋底玄武岩類が,沈みこみ運動によって柘榴石が晶出する高圧化に置かれた後に,部分溶融したものと推定された.海洋底玄武岩が海底熱水変質を受け,微量成分としての銅・硫黄を多く含むものが,ポーフィリー型銅鉱床を形成する可能性が高いものと推定された.日本の阿仁鉱床の花崗岩類はアダカイト質とは無縁であり,この事実は中新世の東北日本で沈み込んだ太平洋プレートは海嶺を遠くはなれ,既に冷却していたためと考えられる.
著者
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石原 舜三
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST)
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Chappell Bruce
School of Earth & Environmental Sciences, University of Wollongong
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