治療法の選択に苦慮し,心不全増悪時の血行動態の変化を心臓カテーテル検査中に偶然観察できた,高血圧を合併した僧帽弁逸脱症の1例
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概要
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症例は68歳,女性.以前から高血圧を指摘されるが放置.入院3日前に胸痛を自覚.その後に軽度の労作時呼吸苦も自覚していた.2008年4月初旬の早朝,排便中に著明な呼吸苦が出現し緊急搬送された.来院時は起座呼吸状態.体血圧251/122mmHg.心尖部にLevine 3/6の収縮期雑音を聴取.胸部X線写真では肺水腫を認めた.無治療の高血圧を原因とした心不全の診断で入院.入院時の脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP)は8.6pg/mLと上昇を認めなかった.血管拡張薬と利尿薬内服後の安定期での心臓超音波検査では全周性の左室肥大を認め,左房径は38mm,左室拡張末期径,収縮末期径はそれぞれ37mmと19mm,左室短縮率は49%であった.また,僧帽弁前尖の逸脱および僧帽弁逆流を認めたが,経胸壁心臓超音波検査上はその程度は重度ではなかった.近位部等流速表面(proximal isovelocity surface area; PISA)法により算出した僧帽弁有効逆流弁口面積は0.34cm2,僧帽弁逆流量は19mL/beatであった.心不全コントロール後の心臓カテーテル検査による心内圧測定では(コントロール:この時の体血圧124/84mmHg); 肺動脈楔入圧7mmHg,肺動脈圧23/13mmHg,と左房圧の上昇や肺高血圧を示唆する所見なし.しかし,体血圧が167/94mmHgに上昇した後に著明なV波が出現し(V波ピーク47mmHg),肺動脈楔入圧22mmHg,肺動脈圧45/22mmHgと急激な上昇を示した.本症例では体血圧(後負荷)の上昇に対して,僧帽弁逸脱症による僧帽弁逆流が増加し,急激に左房圧の上昇が起こると考えられ,僧帽弁逸脱症に対する手術がなされた.心原性の肺水腫を呈したにもかかわらず,BNPの上昇を認めておらず心不全の診断においても注意を要すると同時に,病態把握のために,心臓カテーテル検査中に偶然記録された,血行動態の変化が有用であった.
著者
-
池田 真浩
富山赤十字病院
-
田口 富雄
富山赤十字病院循環器内科
-
賀来 文治
富山赤十字病院循環器内科
-
勝田 省嗣
富山赤十字病院循環器内科
-
平岩 善雄
富山赤十字病院内科
-
新田 裕
富山赤十字病院内科
-
山口 由明
富山赤十字病院循環器内科
-
平岩 善雄
富山赤十字病院循環器内科
-
山本 隆介
富山赤十字病院循環器内科
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