妊娠中に高血圧を契機に発見されたクッシング症候群の1例
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概要
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クッシング症候群は,副腎皮質の機能亢進により主にコルチゾールが過剰に産生され,中心性肥満や満月様顔貌,buffalo humpなどの特徴的な症状が起こる疾患であるが,アンドロゲン過剰により無月経や不妊の原因となるため,妊娠に合併することはまれである.加えて,正常妊娠でもしばしば起こりうる症状が含まれるため,妊娠中の診断は困難である.またクッシング症候群合併妊娠では,流産や死産の頻度の上昇および母体のうっ血性心不全や母体死亡の報告もあり,周産期予後は不良である.今回われわれは妊娠中にクッシング症候群と診断し,生児を得た1例を経験したので報告する.症例は34歳の初産婦で,自然妊娠であった.妊娠12週より146/76mmHgと高血圧を,また顔面や下腿の浮腫も認めており,妊娠22週に高血圧のコントロール不良のため当院に母体搬送された.来院時は塩酸ヒドララジンが点滴投与されており,血圧は158/100mmHgであった.妊娠初期に発症した高血圧の原因検索として行った血液および尿検査にて,血中コルチゾール・24時間尿中コルチゾールがともに高値で,血中ACTHは低下し,低K血症(2.6mEq/l)を認めた.また血中コルチゾールと血中ACTHの日内変動が消失していた.さらにMRIにて左副腎腫瘍を認めた.以上の検査結果より副腎腺腫によるクッシング症候群と診断し,妊娠24週に左副腎摘出術を施行した.術後,血中コルチゾールおよび血中ACTHは正常範囲内となり,また血圧も低下し,メチルドパ内服にて血圧は130-150/70-90mmHg程度でコントロール良好であった.しかし,妊娠31週より血圧が重症化し,また同時期より胎児の発育不全を認めたため,二次性高血圧合併妊娠,胎児発育不全の適応で妊娠33週に帝王切開にて1834gの女児を娩出した.母体に現在も高血圧の残存は認めるものの,おおむね良好な周産期経過を得ることができた.〔産婦の進歩65(2):126-132,2013(平成25年5月)〕
著者
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若狭 朋子
大阪赤十字病院病理部
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若狭 朋子
大阪赤十字病院
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長野 英香
大阪赤十字病院
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山下 唯
大阪赤十字病院糖尿病・内分泌内科
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吉岡 信也
大阪赤十字病院
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河原 俊介
大阪赤十字病院
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砂田 真澄
大阪赤十字病院
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三瀬 有香
大阪赤十字病院
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頼 裕佳子
大阪赤十字病院
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西川 毅
大阪赤十字病院
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川島 直逸
大阪赤十字病院
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羽田野 悠子
大阪赤十字病院産婦人科
-
羽田野 悠子
大阪赤十字病院
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頼 裕佳子
大阪赤十字病院産婦人科
-
三瀬 有香
大阪赤十字病院産婦人科
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