カーボスターP透析による骨のカルシウム調節能の変化について
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
3 mEq/Lのカルシウム(Ca)を含有する重炭酸透析液よりカーボスターP(CP)透析への変更によりアシドーシスの改善や血中Ca値の低下が報告されている.今回われわれはCPにて慢性維持透析中の18名の患者の透析中の血液ガスおよびCa値の変動につき検討した.重炭酸イオンは開始時23.1±2.3より2時間28.7±1.3までは急速に上昇したが,以降ほぼ横ばいとなり,終了時には30.0±1.1 mEq/Lであった.透析液の重炭酸イオン濃度(35 mEq/L)より考えて,透析中に細胞外液以外の部位に緩衝物質として取り込まれている可能性が考えられた.イオン化Ca値は開始時高値であったものは下降し,逆に低値であったものは上昇し,1.15 mmol/Lあたりに収束してくる傾向であった.CP透析中のCa出納を透析液連続抽出法で検討した.Caの除去は除水によるものがほとんどで,血液と透析液との濃度勾配による出納ではほとんどの例で負荷されていた.透析中に血中のイオン化Caが減少しているのに,濃度勾配による出納ではCaが負荷されており,この負荷はCa塩の形で行われている可能性が考えられた.CP透析導入前1年間のPTH値よりi-PTHが60 pg/mL未満の29例(PTH低値群),CP導入前1年以上i-PTHが60 pg/mL~180 pg/mLの36例(PTH正常群)およびCP導入前1年以上i-PTHが180 pg/mL以上の19例(PTH高値群)を対象とし,3群の透析前後の補正Ca値およびi-PTHの経時的変化を検討した.キンダリー2E号(KE),AF2P号(KP)透析よりCP透析へ移行した結果,透析後のカルシウム値は3群とも低下した.透析前のCa値はPTH高値群およびPTH正常群は変化しなかった.PTH低値群はPTH正常群より透析前のCa値が高値であったが,CP移行後にはPTH低値群の透析前Caは有意に低下した.PTH正常群とPTH低値群のPTHはCP移行後に上昇した.PTH低値群のPTH上昇は,透析中に血中イオン化Ca値が低く推移し,透析前のCa値も低くなったためと考えられた.透析前のCa値が低下の理由としてアシドーシスの改善によりCa調節能が改善したためと推察された.
著者
-
正井 基之
富山医科薬科大学 泌尿器科
-
内野 順司
みはま病院ME部
-
正井 基之
医療法人社団誠仁会みはま病院
-
正井 基之
みはま病院
-
坂井 健彦
みはま病院
-
石丸 昌志
みはま病院
-
猪又 扶美
みはま病院
-
吉田 豊彦
みはま病院
関連論文
- (社)日本臨床工学技士会が考える透析液清浄化ガイドライン : 第51回日本透析医学会ワークショップより
- 「透析液清浄化の到達点はどこに」を総括して
- 3. 悪性腫瘍と鑑別が困難であった特発性副腎出血の1例(第1083回千葉医学会例会・第11回千葉泌尿器科同門会学術集会)
- PP2-018 浸潤性膀胱癌に対する放射線併用抗癌剤動注化学療法の近接効果(一般演題(ポスター))
- 上部尿路結石症患者における食事指導と尿中結石関連物質の検討
- 系統的前立腺生検陰性患者の経過
- 前立腺癌診断における系統的針生検の意義
- OP-204 腎性貧血(血液透析)患者におけるHb濃度変動様式の検討(腎不全・血管外科,一般演題口演,第98回日本泌尿器科学会総会)
- 災害に強い透析装置・医療機器-第42回日本透析医学会カレントコンセプト'97より-
- 2011年版 社団法人 日本透析医学会「エンドトキシン捕捉フィルタ(ETRF)管理基準」
- カーボスターP透析による骨のカルシウム調節能の変化について
- カーボスターP透析による骨のカルシウム調節能の変化について
- カーボスター透析液の調整と慢性維持透析患者の酸塩基平衡
- 当院で経験した血液透析患者に合併したヘパリン起因性血小板減少症 (heparin-induced thrombocytopenia : HIT)
- カーボスター透析液の調整と慢性維持透析患者の酸塩基平衡