Clomiphene citrateのラット下垂体卵巣系に対する作用
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概要
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Clomiphene citrateの臨床的排卵誘発効果に関する作用機序を考察する目的で正常ラット, 卵巣剔除ラット, androgen 不妊ラットなどを用い種々条件下における本化合物の下垂体卵巣系に対する作用を検討した.得られた結果を概括すると次の通りである. (1) 卵巣機能が不十分な幼若ラットや卵巣別除ラットに投与すると本化合物は1日10μg以上の投与により子宮重量増加作用 (uterotropic effect : estrogenicity) を示す. (2) 卵巣機能が正常で estrogen 分泌がある場合には本化合物1日10μg以上の投与により子宮重量減少 (antiuterotropic effect ; anti-estrogenicity), 下垂体LH含量減少などが認められた. (3) Parabiotic miceを用い gonadotropin (主にFSH) 過剰分泌に対する影響を調べたところ, 本化合物1日10μg以上の投与で抑制効果がみられた. (4) ラット正常排卵は本化合物300μg 1回投与により5例中2例に抑制がみちれた.しかし100μg以下の投与量では何ら影響がみられなかつた. (5) 下垂体別出幼若ラットに gonadotropin (PMS+HCG) を投与し人為的に排卵を惹起させる場合, 本化合物1日100μg以上の前処置により排卵抑制がみられたが, 1日1~10μgの比較的少量投与では逆に排卵数が対照より増加する結果が得られた. (6) 生後5日目に testosterone propionate 100μgを投与して作製した不妊ラットに clomiphene 1日100μg以上を投与すると下垂体LH含塁の増加が認められた. (7) 卵巣別除ラットに1日1~100μgのclomiphene を投与すると血中LH含量は対照に比し明らかに増加したが, 下垂体lH含量の低下は認められなかつた.従つてclomiphene citrate は子宮重量に何ら変化を来さないような低用量を投与した場合は下垂体LHの産生, 放出を促進したり, 卵巣のLHに対する反応性を高める作用があるが, 比較的高用量を投与すると機能的卵巣の有無により anti-estrogenicity や estrogeniCityを示したりする化合物であるといえる.本化合物が低用量で下垂体LHの産生, 放出を促進し, 卵巣の gonadotropin に対する感受性増加を来すことは不妊症患者に対する臨床的排卵誘発効果の説明に根拠を与えるものといえる.
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