凍結胚移植後に子宮内と卵管間質部の同時妊娠をきたし腹腔鏡補助下異所性妊娠手術により生児を得た1例
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概要
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子宮内外同時妊娠の自然発生は30,000妊娠に1例とまれであるが,ARTの普及に伴いART後妊娠では670妊娠に1例と増加傾向にある.それに伴い,卵管間質部との内外同時妊娠の頻度も増加している.卵管間質部との内外同時妊娠の治療においては従来開腹による間質部切除や間質部切開術が施行されることが一般的であったが,子宮内妊娠に対する影響を最小限にすることが重要である.今回われわれは凍結胚移植後に生じた卵管間質部との内外同時妊娠に対し腹腔鏡補助下に卵管間質部切開術行い,生児を得ることに成功した.症例は39歳の初妊婦.他院で原因不明不妊に対して胚盤胞2個で凍結胚移植を受け,妊娠6週1日に内外同時妊娠を疑われ当院に紹介された.子宮内に心拍を伴う胎芽を,右間質部には胎嚢のみを認めたため入院のうえ子宮内妊娠の成長と間質部妊娠の流産を待機した.しかし右間質部に心拍を伴う胎芽が出現し,右下腹部痛を認めたため妊娠7週0日に緊急腹腔鏡補助下手術を施行した.腹腔内出血を認めず,骨盤内に強い内膜症性癒着を認めた.体外法で間質部切開術を行った.術後経過は良好で妊娠9週0日にいったん退院とした.間質部妊娠術後の子宮破裂の報告もあったため,妊娠29週より管理入院を開始した.切迫早産となり収縮抑制困難と右側腹部痛が出現したため,妊娠35週6日に帝王切開を施行し,1994g,アプガースコア9点(5分)の女児を得た.児は経過良好で成長発達は正常である.経腟超音波検査機器の進歩とART後の内外同時妊娠への警戒の浸透から早期診断例が増加している.治療法は手術療法が主であるが,母体と子宮内妊娠への手術侵襲の影響がより低減される保存的療法や局所薬物療法の報告もある.手術療法においても子宮内妊娠の予後を改善するためより低侵襲な治療を確立する必要がある.〔産婦の進歩63(4):499-504,2011(平成23年11月)〕
著者
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大久保 智治
京都府立医大
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北脇 城
京都府立医大
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楠木 泉
京都府立医大
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辰巳 弘
京都府立医大
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菅沼 泉
京都府立医大
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大久保 智治
京都府立医科大学大学院医学研究科女性生涯医科学
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楠木 泉
京都府立医科大学大学院医学研究科女性生涯医科学
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