思春期後に歯槽骨吸収が自然停止した早期発症型歯周炎患者の1症例
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
早期発症型歯周炎(侵襲性歯周炎)は, 全身的に健康であるにもかかわらず, 口腔内では比較的短期間に急激な歯周組織の破壊が起こることを特徴とする歯周炎である。疾患の重症度はビルレンスの強い細菌の関与や高い疾患感受性をもつ個人体質に依存していると考えられている。病状の進行に関しては, 若年期に急激な歯周組織の破壊が起こり, その後自然に停止する場合があると言われている。本症例報告では, 継続的な歯周治療が患者の都合によりほとんど施されなかった早期発症型歯周炎の一例について, 思春期前から18年間の臨床データを紹介する。患者は初診時11歳の女性。上顎前歯部の叢生を主訴に徳島大学歯学部附属病院矯正科を受診した。当時, 中程度の歯肉炎が認められたものの, 歯槽骨吸収像は観察されなかった。このとき患者は矯正治療の前段階として永久歯の抜歯が必要であると指摘されたため歯科矯正処置を断念した。6年後(17歳)に下顎左側第一大臼歯の疼痛を主訴に再来院した際には, 全顎にわたって重度の歯周炎が発症しており, 患歯をはじめ多数の部位に著しい歯槽骨吸収が生じていた。さらに, 21歳のときに再び下顎左側第一大臼歯に同様の症状を訴えて救急来院し, 同歯は抜歯に至った。その後, 治療は再び中断したが, 初診から18年後(29歳)に上顎大臼歯歯髄炎のため来院した際には, 歯肉の炎症や歯周ポケットが依然として残存していたものの, 歯槽骨吸収のさらなる進行はほとんど認められなかった。以上のように, この患者では思春期(10歳代)に急激な歯周組織の破壊が起こり, 思春期以後(17歳以降)に継続的な歯周基本治療を行っていないにもかかわらず, 歯周炎が大きく進行しなかったことが明らかとなった。本症例は従来言われていた「早期発症型歯周炎は自然に停止する場合がある」ことを示した興味ある報告と言える。
- 特定非営利活動法人 日本歯周病学会の論文
- 2003-09-28
著者
-
木戸 淳一
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部再生修復医歯学部門顎口腔病態制御学講座歯周歯内治療学分野
-
木戸 淳一
徳島大学歯学部歯科保存学第二講座
-
永田 俊彦
徳島大学歯学部歯科保存学第二講座
-
浅原 洋士
岡山大学歯学部歯科保存学第2講座
-
大石 美佳
徳島大学大学院総合歯科診療部
-
永田 俊彦
徳島大学 大学院ヘルスバイオサイエンス研究部歯周歯内治療学分野
-
浅野 将宏
徳島大学歯学部歯科保存学第二講座
-
淺原 洋士
徳島大学歯学部歯科保存学第二講座
-
桐野 晃教
徳島大学歯学部歯科保存学第二講座
-
明丸 倫子
徳島大学歯学部歯科保存学第二講座
-
大石 美佳
徳島大学歯学部附属病院総合歯科診療部
-
濱 秀樹
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部歯周歯内治療学分野
-
濱 秀樹
徳島大学歯学部歯科保存学第二講座
-
浅原 洋士
徳島大 歯 歯科保存学第二
-
浅野 将宏
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部歯周歯内治療学分野
-
塩野谷 明美
徳島大学歯学部歯科保存学第二講座
-
大石 美佳
徳島大学歯学部歯科保存学第二講座
関連論文
- 薬物誘発性歯肉増殖症の発症に関与する遺伝子多型の検索 : α2インテグリン+1648G/A遺伝子多型
- 歯周炎患者の歯肉溝滲出液中に含まれるI型プロコラーゲンペプチドおよびオステオカルシンの定量分析
- 著明な過剰根管充填の経過を長期観察した3症例
- ハムスター歯周炎モデルにおける加味清胃散(漢方)の歯槽骨吸収抑制効果
- サイクロスポリンA投与ラットにおける歯槽骨の組織学的解析
- D-27 埋伏上顎小臼歯の再植術にエムドゲイン^>[○!R]
- B-26 10 : 10 ヒト前立腺癌細胞の培養上清中に存在する骨原性細胞分化調節因子について
- ヒト前立腺癌細胞の培養上清中に存在する骨原性細胞分化抑制因子について
- ニフェジピンによる歯肉増殖症に関する研究 : ヒト歯肉線維芽細胞におけるニフェジピンおよびEGFの増殖に及ぼす影響
- 歯周疾患患者の歯槽骨欠損部に?塞したリン酸カルシウムセメントの臨床評価
- C-衛-8-14 : 10 セラミックシャープニングストーンの傷に関する一考察
- KCB-1D (FGF-2) 歯周組織再生試験(第II相)その2 : 安全性の評価
- KCB-1D (FGF-2) 歯周組織再生試験(第II相)その1 : 有効性の評価
- 糖尿病性腎症患者の歯周病罹患に関する疫学的研究
- 薬物性歯肉増殖症発症におけるα2インテグリン遺伝子多型の関与
- 小柴胡湯はヒト口腔上皮細胞のカルプロテクチン発現を増加する
- 抗菌ペプチドを発現する上皮シート作製における培養環境の検討
- マイクロアレイを用いたIL-1α刺激ヒト上皮細胞における抗菌ペプチド遺伝子発現の分析
- 培養歯髄細胞におけるテネイシンの細胞接着阻害作用および各種因子の影響
- サイクロスポリンA投与ラットにおける骨基質蛋白の遺伝子発現の変化
- IL-1αおよびTGF-βがヒト歯肉上皮細胞のカルプロテクチン発現に及ぼす影響
- サイクロスポリンA投与ラットの骨リモデリングにおけるオステオネクチンの発現変化
- ノルアドレナリンとコルチゾールがヒト単球由来細胞のカルプロテクチン発現に及ぼす影響
- 最終糖化産物AGEが骨芽細胞の分化に及ぼす影響
- ラット頭蓋冠由来細胞が合成分泌するカルシウム結合性蛋白とメチルチオアデノシン代謝との関連
- B-21-15 : 30 ニフェジピン投与ラットにおける歯肉上皮細胞のアポトーシス抑制
- B-19-9 : 10 ヒト単球カルプロテクチンの分泌に及ぼすLPSおよびサイトカインの影響
- 塩酸マンジピン服用患者にみられた歯肉増殖症の1例
- D-23 GTR法において膜露出が認められた症例の長期経過観察
- B-33-10 : 20 サイクロスポリンA投与ラットにおける脛骨の骨量変化について
- B-28-9 : 20 骨芽細胞培養系におけるサブスタンスPの分化抑制作用とサイトカイン産生促進との関連
- 人工透析患者の歯周病罹患度に関する疫学的研究
- オスモティックストレスが培養歯髄細胞の硬組織形成能とオステオポンチン産生に及ぼす影響
- 歯髄オステオポンチンの産生に及ぼすグルコースの影響
- アレンドロネート投与ラットにおける歯槽骨吸収抑制効果
- 培養歯髄細胞のテネイシン発現に及ぼす各種因子の影響
- 培養歯髄細胞におけるテネイシンとフィブロネクチンの発現ならびにTGF-βの影響について
- MMP阻害剤の歯槽骨吸収抑制作用
- Treponema denticola由来メチル基受容走化性蛋白の遺伝子クローニング
- エナメルマトリックス蛋白による骨芽細胞分化抑制作用および活性型TGF-βの関与
- ラット頭蓋冠由来骨芽細胞の分化発現に及ぼすエムドゲイン^【○!R】の影響
- C-14-15 : 30 ストレス関連因子が骨芽細胞の分化に及ぼす影響
- A-26-13 : 40 ニフェジピン投与ラット由来歯肉線維芽細胞におけるコラーゲンファーゴサイトーシスの抑制
- ニフェジピン投与ラットにおける歯肉増殖症の発現とアポトーシスとの関連
- サイクロスポリンAによって誘発されたラット増殖歯肉上皮におけるケラチンの発現について
- C-5-9 : 40 ラット歯肉組織におけるサイクロスポリンAのアポトーシス抑制作用
- A-25-17 : 30 TJS-029(加味清胃散)の実験的歯周炎に対する効果
- B-19-1210 ビタミンD欠乏ラット歯槽骨におけるγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)量について
- 歯槽骨オステオカルシンに関する研究 : 1.ラット下顎骨のγ-カルボキシグルタミン酸量について
- ラット歯槽骨のγ-カルボキシグルタミン酸(Gla)量について : 第29回秋季日本歯周病学会総会
- A-49-1540 歯周病患者の歯肉溝浸出液中のホスホリパーゼA_2活性について
- ハムスター実験的歯周炎におけるプロスタグランディンE_2の歯槽骨吸収抑制効果
- ハムスター歯周炎モデルにおけるプロスタグランディンE_2の歯槽骨吸収に与える影響
- ラット胎児頭蓋冠由来細胞培養系におけるプロスタグランディンE_2の石灰化促進作用
- B-6-9 : 50 ラット骨原性細胞培養系におけるプロスタグランディンE_2の基質石灰化に及ぼす影響
- 株化ラット歯髄細胞培養上清がラット頭蓋冠由来骨原性細胞の石灰化骨様結接形成に及ぼす効果
- サイクロスポリンAがラット骨代謝に及ぼす影響 : 歯槽骨と脛骨の形態学的分析
- KCB-1D (FGF-2) による第II相歯周組織再生試験 : KCB-1Dにより著明な改善が認められた一症例
- 株化歯髄細胞が合成する細胞外基質タンパク質ならびにTGF-βの影響に関する影響
- B-5 ニフェジピン誘発性歯肉増殖症モデルラットにおける病理組織学的検索
- C-6 サイクロスポリンA誘発性ラット歯肉増殖症におけるI型コラーゲンのmRNAの経時的発現
- 熱変性脱灰骨基質ゼラチン, 熱変性脱灰歯, および架橋コラーゲンの筋肉内移植後に認められた石灰化の組織学的比較
- ラットにおけるニフェジピン誘発性歯肉増殖症の発症機序に関する研究 -増殖部位のアポトーシス関連マーカーの検索-
- 尿路結石患者の歯石沈着指数に関する疫学的検索
- B-15-11 : 30 レチノイン酸が骨芽細胞の分化に及ぼす影響 : 細胞の分化段階で異なる作用について
- B-12-11 : 00 歯石中のカルシウム結合性蛋白に関する研究 : オステオポンティン及びカルプロテクチンの同定
- B-26-17 : 50 ラット歯肉組織中のトランスグルタミナーゼ活性について
- 口呼吸が関連した歯肉炎の長期観察症例
- A-4-9 : 30 ラット骨原性細胞の分化過程における副甲状腺ホルモンレセプター数の変化とホルモンの影響との相関
- C-11-9 : 50 ヘルトビッヒ上皮鞘細胞と歯根膜細胞の共存培養における形質の変化
- B-12-11 : 10 ヘルトビッヒ上皮鞘細胞の分離培養とその性質
- 培養骨芽細胞 MC 3 T 3-E 1 におけるフェニトインの分化促進作用
- 上顎臼傍結節内にみられた歯髄腔の存在について
- 歯周疾患活動性指標としてのCalprotectin応用の可能性 -臨床指標および歯肉溝滲出液中の生化学的指標との相関について-
- B-18-14 : 10 フェニトインが骨芽細胞の分化に及ぼす影響
- A-20-16 : 20 歯周疾患の活動性指標としてのCalprotectinの有用性
- B-11 骨芽細胞における骨シアロ蛋白の役割 : アンチセンスDNAを用いた蛋白発現の抑制
- 思春期後に歯槽骨吸収が自然停止した早期発症型歯周炎患者の1症例
- P-1 思春期後非活動期に入ったと思われる早期発症型歯周炎の一症例
- バイオマーカーを用いた歯周病診断
- ミネソタ生活一年間(第29回例会一般講演抄録)
- A-8-10 : 20 歯肉溝滲出液中のOsteopontinおよびOsteocalcinの同定と定量
- Porphyromonas gingivalis由来リポ多糖による骨芽細胞の分化抑制作用およびその機構解明に関する研究
- 歯髄結石中に存在する基質蛋白の免疫組織学的検索
- Porphyromonas gingivalis 381株由来菌体抽出画分が骨芽細胞の分化に及ぼす影響
- B-26-9 : 10 サイクロスポリンA誘発性ラット歯肉増殖症における線維芽細胞のI型コラーゲンのファゴサイトーシスについて
- B-8-10 : 10 Porphyromonas gingivalis381株由来LPSが骨基質蛋白のmRNA発現に及ぼす影響
- A-27-9 : 48 ニフェジピン誘発性ラット歯肉増殖症におけるI型コラーゲンのmRNAの経時的発現
- Porphytomonas gingivalis 381株由来LPSが骨芽細胞の分化に及ぼす影響
- 歯周疾患患者の歯肉ポリアミン量について
- 歯周病におけるカルプロテクチンの役割と発現調節機構の解明
- D-14 人工透析患者の歯周疾患罹患状況について
- 再生不良性貧血患者に認められたサイクロスポリン A 誘発性歯肉増殖症の一例
- D-25 下顎全歯に認められた著名なセメント質過形成の一症例
- 慢性根尖性歯周炎の進行に伴って形成されたセメント質肥大の経時的変化
- カルプロテクチンの培養上皮細胞における発現調節
- カルプロテクチンおよびI型プロコラーゲンペプチドの歯周病診断指標としての有用性
- Diphenylhydantoin (DPH)による歯肉増殖症に関する研究 : ウシ歯肉組織培養系におけるDPHの核酸および蛋白合成能に及ぼす影響
- 思春期後に歯槽骨吸収が自然停止した早期発症型歯周炎患者の1症例
- ラット実験的歯周炎におけるオステオプロテジェリンの局所投与による歯槽骨吸収抑制効果