う蝕の発生および進行機序に関する実験的研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
離乳期ハムスターの口腔内に<I>S. mutans</I>1089 (serotype d) を接種し, う蝕誘発食Diet2000 (CLEA Co., Japan) を用いて, う蝕発生および進行に影響を与える食餌因子について検索した。これらの因子によって影響される歯垢中の微生物の消長について実験的研究を行なった。<BR>実験 (I) では, う蝕誘発性食餌を用いて, その中のショ糖の粒度およびショ糖の含有量, 更にはう蝕誘発性食餌に種々の加工操作を加えて物理的形状の異なった食餌を作製して, これらの食餌を離乳期ハムスターに与えることによってう蝕発生およびその進行の程度に与える影響について検索した。実験 (II) では, <I>S. mutans</I>を中心として歯垢内細菌叢の変動を追求し, さらに歯垢内細菌叢の変動を定量的に測定する方法としてATP量を用いて判定した。<BR>その結果, 次のことが明らかになった。<BR>1. 粉末のう蝕誘発食中のショ糖粒度は, う蝕の発生および進行に強く影響していた。<BR>2. う蝕の発生および進行は, う蝕誘発食に加えた, 例えば水を混合して, 混捏する, 固形成型する, 熱処理するような操作によって変化する物理的形状とも強く関連した。また口腔内停滞性の高い食餌群ほど高いう蝕罹患状態を示した。<BR>3. 熱処理にともなってう蝕誘発食は, その栄養価が低下してう蝕進行に与える影響がみられるが, この栄養価の低下によって生ずるう蝕発症に与える影響は全身に与えるそれと比較して極めて軽度であった。<BR>4. う蝕の発生および進行は, う蝕誘発食を固形成型処理した場合には, ショ糖含有量に依存していないことが明らかになった。<BR>5. <I>S. mutans</I>の定常期は, ショ糖存在下においては著明に延長した。<BR>6. <I>S. mutans</I>は, 実験開始後4週間で, 歯垢細菌叢の80%以上を占めた。<BR>7. 高度なう蝕の発生および進行を示す群は, 対照群に比較して, 総生菌数, <I>S. mutans</I>数の有意な増加を示していた。<BR>8. ATP量の測定は, う蝕誘発性を示す歯垢の生細菌の動態の検索に有効であった。<BR>9. う蝕発症に関する動物実験では, 使用したう蝕誘発食の物理的性状を明らかにする必要がある。
- 有限責任中間法人 日本口腔衛生学会の論文
著者
関連論文
- 有珠山噴火後の避難住民に対する巡回歯科医療サービス
- 有珠山噴火災害による長万部町避難所の歯科保健医療活動
- 北海道有珠山噴火に伴う避難住民の歯科保健 - 歯科保健巡回を実施して -
- 北海道江別市における3歳児のう蝕有病状況の推移
- 北海道E保健所におけるむし歯予防対策の評価第2報歯科保健指導開始時期の相違と生活習慣行動
- 北海道E保健所におけるむし歯予防対策の評価第1報 受診回数と生活習慣モデル分析
- 2. 1歳6ヵ月児歯科健康診査における齲蝕罹患型(O_1,O_2)の判定基準について 第二報(第45回日本口腔衛生学会関東地方会)
- 1歳6ヵ月児歯科健康診査の乳歯齲蝕罹患分類におけるO_1,O_2型の判定基準に関する研究
- う蝕ハイリスク児のスクリーニングに関する研究
- 13. 骨粗鬆検診受診者の口腔内状況から(第7回日本口腔衛生学会北海道地方会)
- 12. 新篠津村における高齢者歯科保健に関する現状報告(第7回日本口腔衛生学会北海道地方会)
- 北海道新篠津村の成人歯科健康診断における口腔内状況の6年間の推移
- 5. 新篠津村における6年間の歯科健診事業報告(第5回日本口腔衛生学会北海道地方会)
- 高齢者における歯科保健状況の初年度と7年目と比較検討報告
- 北海道成人歯科保健調査から第二報:歯磨き回数, 喫煙, 間食, 飲酒の影響について
- 北海道成人歯科保健調査から第一報:現在歯, 喪失歯及び歯の寿命の男女差について
- 成人・老人歯科健康診断事業の効果の検討
- 2. 歯科調査統計におけるインターネット利用の試み(第7回日本口腔衛生学会北海道地方会)
- 4. 1歳6ヵ月歯科健康診査の推移状況 : 西歴2000年の目標達成にはもう一息(第9回日本口腔衛生学会北海道地方会)
- 19. 8020運動に関する道民の意識 : 道政モニターの結果から(第5回日本口腔衛生学会北海道地方会)
- 「介護保険と歯科(医)の役割と今後の大学のあり方について」(第16回東日本歯学会学術大会講演から)
- 地域歯科保健活動と保健所における歯科保健事業とのかかわり合い
- う蝕の発生および進行機序に関する実験的研究