羽毛および羊毛ケラチン溶液よりユバ様皮膜の生成について
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概要
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羽毛および羊毛ケラチン溶液より皮膜の生成について検討し,次の結果を得た. (1) 含メルカプトェタノール・アルコール溶液を用い羽毛より約75%,羊毛より約30%の抽出率で抽出ケラチソを得た. (2) 羽毛ケラチン溶液より,pH 4.0〜10.0で強靱な皮膜を生成した.羊毛ケラチン溶液より皮膜生成は困難で,かつ得られた皮膜は,羽毛に比しはるかに脆弱であった. (3)羽毛ケラチン溶液より得られた皮膜の表面,裏面および断面の微細構造を走査型電子顕微鏡で観察した結果,表面および裏面に著しい相違が認められた.また断面図より膜形成において,層状形成とケラチンフィブリルの規則的な配向が観察された. (4) 尿素1M添加により,羽毛ケラチン溶液より成膜が著しく阻害され,得られた膜は著しく脆弱であった. (5) SH基封鎖試薬は破断応力を著しく低下し,伸び率を増加した.またS-S結合選元試薬は破断応力を著しく増加し,伸び率もやや増加した. (6) 羽毛および羊毛,それらの抽出ケラチン粉末および皮膜のアミノ酸組成を調べたところ,羽毛の場合各過程の変化は小さいが,羊毛では皮膜においてかなり大きな変化があった. (7) 赤外線吸収スペクトルで羽毛および羊毛の抽出ケラチン粉末および皮膜のアミド I,IIの吸収極大を調べたところ,羽毛,羊毛とも溶液においてα構造,皮膜においてβ構造の存在が示唆された. (8) X線回折では羽毛,羊毛とも抽出ケラチン粉末では2θ=20〜23°に輻広い極大を,皮膜では2θ=20°に鋭い極大を示した. 以上の結果より,成膜に際してはシスチン残基が膜質に強く影響し,また成膜の難易はタンパク質のアミノ酸組成に基づく結晶領域の生成の難易に左右されるもののように思われた.また成膜におけるケラチン分子の結晶構造の形成には,β構造の寄与が推定されるとともにα構造からβ構造へのコンフォメーションの変化が認められた.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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