大豆蛋白質のゲル形成に関する研究(第5報) : 加熱変性の効果について
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概要
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比較的高濃度における大豆蛋白質ペーストのゲル形成におよぼす,工程中の蛋白質変性処理の効果について検討して次の結果を得た. (1) 未変性脱脂大豆から出発する場合は,抽出液の段階で80°C以上の加熱処理を加えなければ強い弾力的なゲル形成はおこらない.一方,NSIが約60以下の変性脱脂大豆から出発する場合は,抽出液段階での熱処理は強い弾力的なゲル形成のために必ずしも必要ではない. (2) 無加熱抽出液から得られるペーストの流動曲線は,原料脱脂大豆の変性度のいかんにかかわらず準粘性流動を示すのに対し,95°に加熱処理した抽出液からのペーストは一定の降伏値を有する準塑性流動に変化する,また,ペーストの粘性の速度勾配依存性および動的粘性率と動的弾性率の周波数依存性は,抽出液の加熱処理にによっていちじるしく増大する.そして,これら増大の度合は,NSIが60付近の脱脂大豆の方が未変性脱脂大豆に比べて明らかに大きい. (3) 蒸溜水,燐酸緩衝液(pH 7.6,イオン強度0.5)および0.01 Mメルカプトエタールまたは1.5M尿素を含む燐酸緩衝液に対する,未変性脱脂大豆からのペーストの溶解度は,抽出液を95°Cに加熱することによりいちじるしく低下する.6M尿5または,0.01 Mメルカプトエタノールと1.5 M尿素を含む燐酸緩衝液に対する溶解度は,抽出液を加熱しても,無加熱の場合と同様90%以上の高い値を示す.一方,ゲルの溶解度はペーストのそれに比べて全般的に低いが,6M尿素と0.OlMメルカプトエタノールを共存させた燐酸緩衝液に対してだけは90%以上の高い値を示す.NSIが60付近の変性脱脂大豆から出発した場合のペーストおよびゲルも上と同様の傾向を示すが,加熱処理した抽出液からのペーストの溶解度は未変性脱贈大豆の場合に比べて低いという特徴をもつ. (4) 未変性脱脂大豆の無加熱抽出液から出発した場合,ゲル形成時の加熱温度によって燐酸緩衝液に対する溶解度は70°Cを境として急激に減少する.また,メルカプトエタノールあるいは尿素をそれぞれ単独か,または混合して燐酸緩衝液に加えることによる溶解度の増加は80°以上の加熱温度範囲においてとくにいちじるしい.一方,未変性脱脂大豆の加熱抽出液から出発した場合,ゲル形成時の加熱温度にかかわらず燐酸緩衝溶液に対する溶解度は一様に低く,また,メルカプトエタノールを共存させることによる溶解度増加は6M尿素の場合の増加に比べて全般的に少ない.