Cell reusing ProcessによるL-アスパラギン酸の生産
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概要
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エタノール資化性菌の利用に関する研究中に, DL-α-アミノ酪酸の耐性を付与したBrevibaeterium属の変異株が,強力なアスパルターゼ活性を有することを認め,これを利用したL-アスパラギン酸の工業的生産法を確立すべく検討を実施した. (1) 最大の反応速度を示す条件は, pH 9.3,温度54°Cであった. (2) 酵素活性は, 2価の金属イオン,とくにCa2+の添加により顕著に賦活化された. (3) 酵素活性は,基質であるフマル酸存在下では高い熱安定性を示した. (4) 菌体反応であるが,界面活性剤の添加は,必要性を認めなかった. (5) 培養30時間前後で,培養液中のアスパルターゼ活性は最大を示した. (6) L-アスパラギン酸の生産条件として,反応時間20時間,菌体添加量を3%w/vの条件下にて,アンモニウムイオン, 4モル,反応温度45°Cが至適条件であった. (7) 酵素源としての菌体は,繰返し反応に供することができた.なお,第1回目の反応においてのみ,フマラーゼによるリンゴ酸の副生が認められた. 以上,本研究では,従来の固定化法とは異なり,特殊な設備を必要としない,菌体繰返し反応法(cell reusing process)によるL-アスパラギン酸の工業的製法の可能性を見出した. Cell reusing processによるL-アスパラギン酸の製法では菌体固定化等の工程を必要とせずprocessが簡素化できること,反応温度が45°Cと比較的高く雑菌汚染の心配が少ないこと,また反応にとくに界面活性剤の添加を必要としないため,菌体内成分の漏出が極力抑えられる等の利点を有しており,以上の観点から本プロセスは, L-アスパラギン酸の工業的生産に際して有用なプロセスのひとつと考えられる.今後はcell reusing processの最大の利点となる添加基質濃度(フマル酸濃度)の増大化等について検討を進めていく.
著者
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湯川 英明
三菱油化株式会社中央研究所
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寺沢 真人
三菱油化株式会社中央研究所
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高山 義博
三菱油化株式会社中央研究所
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奈良 昭一
三菱油化株式会社中央研究所
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山田 誠一郎
三菱油化株式会社中央研究所
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