Streptomyces属菌種による糖類の酸化に就て
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概要
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著者等は叙上の実験に於てStreptomyces属の多数の菌種をD-グルコースその他の各種炭水化物をC源として激しい好気的条件の下で培養するとき,多数の炭水化物から著明なα-ketoglutarlc acidと微量のpyruvic acidを生成することを認めた.これらのketo acidsは既にPseudomonas属菌種(4)(9), Serratia marcesceus(5), coli-aerobacter属菌種(6). Bacillus megaterium(5), Mycobacterium butyricum(10), Bacterium ketaglutaricum n. sp(11)或いはCorynebacterium creatinovorans(12)等広範囲にわたる細菌の菌種に就てその生成蓄積が報告せられていると共に,生物の物質代謝系として重要な所謂TCA cycle中の重要な中間体である.上記の各菌種の多くに関して糖の末端代謝がこのTCA cycleに吸収せられる事実も明らかにされており,又Streptomyces属菌に関してもCOCHRANE(1)がSt. coelicolorにTCA cycleの存在を指摘している.かかる事実を綜合考察すれば本報叙上の実験に於て著者等の発見した多数のStreptomyces属菌種のα-Ketoglutaric acid生産現象も,その成因を上記のTCA cycle機構と分離して考えることは妥当でないように考えられる,又著者等の実験結果の示す処によればStreptomyces属菌中には例えばSt. albidoflavus 91やSt. fradiae 260の如くD-グルコース或いはグリセリンかちその40%に達する該keto acidの生成の認められる場合もあり,将来L-グルタミン酸原料としての該酸製造上この種の微生物の応用も可能性があるものと思われる. 次に著者等は供試Streptomyces属菌種の多数がグリセリンからdioxyacetoneを生成すること及びD-ソルビトールからL-ソルボースが高収量に得られることを指摘した.換言すればStreptomyces属の多くの菌種には糖アルコールの酸化に関して,従来知られているAcetobacter属の菌種との相似性が認められた.特にD-ソルピトールよりL-ソルボースの生成に関しては現今Acetobacter属菌以外には全然報告を見ず,本法に於ける如き高収率で各種のStreptomyces属菌に該酸化性の認められたことは極めて興味ある事実である.これらStreptomyces属菌に於ては又従来のAcetobacter属菌と異りD-マンニットよりD-マンノース, D-ブラクトースが得られないが,このことはD-マンニットのこの種微生物による代謝がD-フラクトースやD-マンノースを経由しないということを意味するものではないことは,これらのaldose或いはketoseからもD-マンニットをC源とした場合同様に著明なα-ketoglutaric acidやpyruvic acidの生成が認められる事実からも明らかであろう.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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