稲熱病菌に関する生化学的研究 : (第2報)稲熱病菌の毒素Piricularinの稲に及ぼす生理作用に就て
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概要
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Piricularinの稲苗に対する毒性はα-picolini〓 acidのそれより著しいがpiricularinは極めて高度に稀釈する時は逆に生育促進の現象が現われる.且つこれに伴つて見られる現象は稲生体中のpolyphenol成分の増加と呼吸の増大である.更に興味ある事はpiricularinの阻害作用が稲のpolyphenol成分の主体をなしているchlorogenic acidの等モルを添加する事によつて全く除かれる事である.一方又稲苗の呼吸がPolyphenol阻害剤p-nitrophenolによつてかなり著しく阻害されるのであつて,かかる一連の現象に基いて我我は稲の呼吸系に於てpolyphenol系がかなり大きく関与しているのではなかろうか,然してpiricularinの稲苗生育阻害作用の機序としてpolyphenolとの結合による呼吸阻害が一つの大きな要素をなしているのではないかと考えるのである.なおpiricularinの刺戟作用による稲のpolyphenol成分の増加は毒素の刺戟作用に依る抗毒素の形成という結論になり意味深いものを感じさせられる. 次にpiricularinの作用を稲熱病抵抗性品種「いもちしらず」と比較的罹病性品種「農林21号」とに就て比較する時は,前者に就てpiricularinの阻害作用に強く,他面その稀薄溶液の刺戟作用に対して感受性の大きい傾向が見られる.即ち刺戟作用に対して感受性の大きいという事が阻害作用に対して抵抗性の大きい事の要素をなしているものと考える.又piricularinの刺戟作用に対して感受性の大きいという事は稲熱病菌の侵入に対しても感受性の鋭い事,反応性の大きい事を裏づけるものではなかろうか.病理組織学的に抵抗性の強い稲では稲熱病菌の侵入に対する生理的抵抗として組織細胞が速かに反応を示す事,これに伴つて速かに褐変現象を起して病斑を褐点型で喰い止める事が共通した現象として認められている事を考えると,上に述べたpiricularinの刺戟作用に対する感受性を利用して育種上抵抗品種の撰沢に当つて組織抵抗性の簡易検定がなされ得るのでなかろうか.
- 社団法人 日本農芸化学会の論文
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