リンゴ枝幹皮部の栄養障害に関する研究 (第1報) : マンガン過剰に基づく粗皮病の発生について
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概要
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デリシャスおよび国光の枝幹皮部に多発する粗皮病の発生と樹体内のMn含量の関係を確めるため, 水耕およびほ場試験を行なつた。また, 青森県内の粗皮病発生園について調査を行ない, 葉中のMnレベルを検討した。1, 3年生デリシャスおよび国光苗木を水耕下で栽培し, Mn高濃度培養液 (Mn 20ppm) を与えたものは, 処理開始約30日後から各部の生育低下と葉脈間クロロシスが目立ち, 約50日後から粗皮症状の発生が認められ, 各部のMn含量も著しく高くなつた。2. ほ場条件下にある15年生デリシャスおよび国光健全樹に, 1樹あたり150gのMnを5月中旬に土壌に施用した。その結果9月上旬に一部の枝に粗皮病の発生が認められ, その葉中Mn含量は著しく高かつた。3. 1963, 1964の両年にわたり青森県内各地の粗皮病発生園および健全園のべ約200園について, 各品種ごとに発生樹と健全樹の葉中Mn含量を比較したところ, 粗皮病発生樹の葉中Mn含量は平均して健全樹のそれに比べて著しく高いレベルを示した。また, 粗皮病発生樹でMnレベルの著しく低いものは見られなかつた。4. 健全樹の葉中Mn含量の範囲と, 発生樹のそれとの間には overlapping が認められ, 健全樹のMn含量の高いものは粗皮病発生樹のうちMn含量の低いものよりも高い場合があつたが, Mn含量の平均は発生樹が高かつた。5. 粗皮病発生樹のうちでも, 外観上症状の強いものは弱いものに比べてMn含量の平均は常に高かつたが, 範囲については同様に overlapping が認められた。6. 同じ条件下にあり, 症状の強さがほぼ等しいデリシャスと国光の葉中Mn含量の平均を比べると, 粗皮病の発生しやすいデリシャスの方が国光よりも低いMn含量を示した。7. 各品種の健全樹の葉中Mn含量の最高値と発生樹の最低値とを比較し, この両者の値の間に1964年の条件下における症状発生に関する threshold value があると考えると, この値はこの障害の発生しにくい品種ほど高く, もつとも発生しやすい品種であるデリシャスはもつとも低い値を示した。8. 以上のことから, 品種によつてこの障害の発生率が異なる理由の一つとして, 各品種のMn過剰害に対する tolerance の差が重要であると思われる。9. 本報で報告した粗皮病は, Mn過剰によつて発生すると報告されている Internal bark necrosis と同一障害と思われる。
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