リンゴの葉, 果実および枝幹表面からの45CaCl2と45Ca(OH)2の吸収と分布について
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概要
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Ca欠除培養液で水耕栽培した5年生国光の葉, 果実および枝幹部の表面を0.018M45CaCl2溶液と45Ca(OH)2溶液 (わずかに懸濁状態にある) で処理し, オートラジオグラフによつて45Caの吸収と移動を調査し, また, 一部の試料についてはGMカウンターで放射能強度を測定した。この結果は次のとおりである。1. 45Caは葉の表裏いずれからも吸収が認められた。新しようの頂部葉 (若い葉) は基部葉に比べて吸収後のCaの移動がよい傾向が認められた。また, 新しよう中央部の葉1枚を45Ca液に浸漬し, 34日後にその上および下の葉への移動を調べたが, いずれも45Caは検出できず, 葉から葉へCaは移動しにくいと思われた。これに反し, 果実のついている花そう葉に45Caを塗布し, 34日後にCaの分布を調査したところ, 同じ花そう内の果実に45Caが検出できた。2. 果実を45Caに浸漬し, 34日後にオートラジオグラフを作り, また, 74日後にとつて放射能強度を測定した。45Caの分布は果皮が最も大きく, 芯がこれに次ぎ, 果肉は最も少なく, しかも表皮から遠いほど小さい傾向があつた。芯部の45Caレベルが高い理由は, こうあ部と芯部の距離が近いことおよび浸漬ではこのくぼみに液がたまりやすいことなど主として物理的なものと思われた。3. 新しようおよび3年枝とも, また, 皮部および木部とも45Caの分布が認められ, 同時に, 処理部分以外へ移動することが確かめられた。45Caの分布は木部に比べて皮部が著しく高く, しかも表皮のレベルがさらに高かつた。4. この実験では一般にCa(OH)2に比べてCaCl2の吸収と移動が著しく大きい傾向がみられた。Ca(OH)2は溶解度以下の濃度で使用したが, 展着剤の添加によつて微量の沈澱を生じ, 実験にはこの懸濁液を使用した。したがつて, 両塩の間にみられた相違は主として水に溶けている45Caの濃度差に起因すると考えられた。5. bitter pit の対策の一つとしてCaの葉面散布をとりあげる場合, 吸収後のCaの移動はきわめて制限され, したがつて果実の表面によく付着するような方法を選ぶ必要がある。6. ボルドー液中のCa(OH)2も, その一部は樹体内に吸収され, 果実のCaレベルを高め, bitter pit の発生を軽減する可能性がある。同様にボルドー液散布によつて葉中のCaレベルにも影響があると考えられた。
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