リンゴのマグネシウム欠乏に関する研究 (第1報) : マグネシウムの注入と葉面散布がマグネシウム欠乏に及ぼす効果
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概要
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青森県各地のリンゴ園に発生している早期異常落葉は, 諸種の点でマグネシウム乏と類似している。これを確認するため1962年春から, マグネシウム溶液の樹体注入と硫酸マグネシウムの葉面散布を行ない落葉の防止状況を調査するとともに症状の比較検討を行なつた。また, これらの処理が葉中のカリ, カルシウムおよびマグネシウムなどの含量に与える影響についても調査を行なつた。毎年激しく早期落葉を示している青森県りんご試験場ほ場の8年生国光を供試し, これにマグネシウム溶液のみ, または窒素, 燐, およびカルシウムを含む試薬をマグネシウムと混合し, 5月上旬から6月上旬の間に, 0.05M溶液として, 1樹あたりMgOに換算して2〜9gを主幹部に注入した。また, MgSO4•7H2Oとして3%相当の溶液に尿素およびグリセリンを混用して, 落花直後から7〜10日おきに10回葉面散布を行なつた。これらの処理によつて, 早期落葉症状の発生は著しく軽減し, またはほとんど完全に防止することができた。供試樹のマグネシウムレベルおよび土壌のマグネシウム含量を考慮し, また, マグネシウム乏症状との症状的な類似点を検討した結果, この早期落葉はマグネシウム欠乏によつて発生したことを確かめた。注入によつて葉中のマグネシウム含量は多少増加し, また, 注入したMgO量と葉中含量の間には正の相関が認められ, これは季節が進むと次第に強くなる傾向がみられた。しかし, 同時に注入した窒素, 燐およびカルシウムの効果は明らかでなく, また, マグネシウムの次年度に対する残留効果も認められなかつた。葉面散布によつて葉中マグネシウム含量は著しく増加し, 特に1年枝基部葉のマグネシウムレベルは頂部葉に比べ著しく高く, この部分にはマグネシウム乏に酷似した薬害が発生した。散布によつて葉中のカリおよびカルシウム含量は低下した。しかも, 基部葉と頂部葉ではマグネシウムレベルに大きな違いがあるにもかかわらず, この低下は1年枝全葉につきほぼ一様におこる傾向がみられた。各葉位のカチオン含量を乾物100gあたりmeで表示し, この合計値について散布および対照樹の間で比較した。同じ1年枝内の個々の葉については, 葉位, 処理の有無および季節によつて合計値は大きな変動を示した。しかし, 1年枝全葉の平均値については, これらの要因の影響は小さく, ほぼ一定値になることが認められた。
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