さし木中におけるさし穂内栄養成分の動向(第2報) : ブドウ休眠枝ざしにおける窒素ならびに炭水化物成分の変化
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概要
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1. ブドウ (品種デラウェア) の休眠枝ざしを供試して発根過程におけるさし穂内の窒素ならびに炭水化物成分の消長を調べた.2. さし穂当たりの乾物重はさし木後60日まで減少をつづけ, その後増加する傾向を示した. その増加は主として新芽の生長によるものであつたが, さし穂の上半部や下半部においてもわずかながら増加がみられ, 新芽でつくられた乾物がさし穂部分へ送りこまれることがうかがわれた.3. さし穂の上半部と下半部について可溶性窒素, 不溶性窒素, 全窒素の含量 (乾物重%) の変化を比較したところ, 可溶性窒素はともに漸減の傾向にあつたが, 不溶性窒素は両者の間で著しく相違し, 上半部では新芽の生長に伴う咸少が著しかつた. その結果, 全窒素も上半部で著しく減少した.4. さし穂から新芽, 新根への窒素の移行の様相を知るために, 新芽, さし穂上半, 下半, 新根の四つの部分について窒素の分布量比を調べた. その結果, 新芽, 新根の生長につれてさし穂の上半部, 下半部における可溶性窒素, 不溶性窒素の分布量比が急激に減少し, さし木後80日における全窒素の分布量比は, 新芽: さし穂上半: 下半: 新根で3.2:3.2:3.3:0.3の値を示し, 可溶性窒素の分布量比は0.6:1.0:0.9:0.1であつた. これらの値からさし木期間中に相当量の窒素がさし穂の下方から上方に向かつて移行することが推察された.5. さし穂の上半部と下半部についてでん粉, 還元糖, 非還元糖, 全糖, 全炭水化物の含量 (乾物重%) の変化を比較したところ, 両者の間でそれほど顕著な相違はみられず, ともにでん粉が全期を通じて総じて漸減したのに対し, 全糖はさし木後40日の間に急激に減少し, その後, 一時増加する傾向を示した. 全糖のこのような変化は還元糖に支配されるところが大きかつた.6. 前記の諸成分の消長を絶対含量からみたところ, 全炭水化物の減少は主に糖によるものであり, 上半部に比べて下半部での減少が著しいことがわかつた. とくにさし木後40日以降においては上半部での減少がきわめて緩慢となり, でん粉が増加する傾向さえみられた.
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