生長ホルモンに依るジヤガイモの發芽抑制
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概要
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1. 7月上旬に掘取つたジヤガイモ (男爵) をナフタレン醋酸加里の0.1及び0.2%液に24時間浸漬すると發芽が抑制されるが, 收穫直後處理した場合が效果が最も顯著で, 收穫後1ケ月或は2ケ月たつた後處理した場合は效果ははるかに劣つていた。1.1kgの薯をナフタレン醋酸メチルエステル0.5gを吸收させた濾紙と共にセロフアン袋中に貯藏したものは翌年3月迄1個も發芽しなかつた。2. メチルエステルの使用量を變えてセロフアン袋中に翌年6月迄貯藏した結果は薯1.5kgに對し0.5g區は全く發芽を見なかつたが0.2g及び0.1gでは可なりの發芽を見た。薯の重量は温度の上昇と共に4月以降著しく減少した。3. 收穫後1週間乃至2ケ月間0.5gのメチルエステルと共に1.5kgの薯をセロフアン紙袋中に貯藏し, 後取出して室内に貯藏した場合, 處理期間が長い程發芽はおくれたが效果は永續しなかつた。これを3月13日畑に植付けた所, 處理期間の長いもの程發芽はおくれ, 莖數も少なく, 熟期もおくれ, 薯の老化が防止されたが, 收量には差を認めなかつた。4. 7月上旬收穫した薯5kgを8月15日にメチルエステルと共に内容19Lの木箱中に翌年6月21日迄約10ケ月貯藏した場合, エステルの量が0.5gの場合は全部發芽したが, 1.5g, 2.5gと使用量の多い程發芽は抑制された。エステルを濾紙に吸收させて處理したものとベントナイトに吸收させて薯にまぶして處理したものとでは同量のエステルを用いても後者の場合は效果が顯著で, ベントナイト2.5g區では殆んど完全に發芽を抑制し, 貯藏期間中の薯の減量も最も少なかつた。此の場合芽の周圍が固くなり時に龜裂する現象が見られた。5. 園藝試驗場東北支場産の薯5kgを12月20日にメチルエステルと共に内容11Lのブリキ罐中に翌年6月4日迄5.5ケ月貯藏した場合は, ベントナイト1.0g區で完全に發芽を抑制し, 濾紙の場合は效果が劣つて2.0gでもなお約半數は發芽した。罐内の濕度が高かつた爲發根を見たが, 發根率は發芽率と反對の傾向があつた。薯の減量は發芽率の少ない區程少なく, ベントナイト1.0g區では125gで薯の状態は良好であつた。6. 木箱やブリキ罐中に貯藏した場合に伸長した芽の先端に新しく薯が形成されたものがあり; 殊に罐貯藏の標準區に多かつた。薯から新薯が形成されるのは暗黒で濕度の高い状態の下で起り易い現象と認められる。7. 本實驗の成績並びに未發表の資料と文献とによつてジヤガイモの貯藏に對するエステルの利用其の他に就て考察を行なつた。