柿の炭酸瓦斯脱澁後の黒變防止に關する實驗(第1報)
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概要
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1. 昭和16, 17兩年に渉り, 炭酸瓦斯脱澁果の黒變防止に有效なる方法を發見せんとして行つた實驗の經過報告である。2. 40°〜100°Cの高温で, 脱澁の前後, 及脱澁中に, 一定時間處理する事によつて黒變を防止し得る事を確め, 各温度に於ける最適處理時間を決定し, その際本處理が必ず有效なるためには, 一定温度以上に果肉温が上昇する状態になる事が必要である事を知つた。即ち高温處理の有效程度は, 温度, 處理時間, 處理後の果肉温の3者によつて決定しうる事が判明した。3. 60°C以上の高温で處理したものはやゝ果色の褪色する傾向があつたが, 50°C以下ではその影響は少かつた。尚80°C以上の處理はしばしば果面が害を被る事が見られた。4. 60C以上の處理では有效時間處理しても果實の硬度の變化はきはめて僅であつたが, それ以下の温度ではやゝ軟化する場合が見られた。5. 實用上比較的良好な處理温度は50°〜70°Cであり, 特に本實驗ではお60°Cで2時間内外の處理が最も良好であつた。しかしながら90°C以上の高温處理は方法の改善により, 好成績を上げうる可能性のある事が考へられた。6. 脱澁中及脱澁前に處理する事はいつれも實用上缺點があり, 脱澁後の處理が最も行ひ易いと考へられた。7. 水蒸氣及熱湯での處理は柿果に對する障害著しく, 高温處理は乾熱によらねばならぬ事カミ明となつた。8. 柿果の硬さ及 Vitality と黒變との關係につき2, 3の考察をなした。9. 高温處理を實用に供する裝置につき考察をなした。10. クロロホルム, 及四鹽化炭素を脱澁中に併用する事は, 黒變のやゝ輕度なものに對しては完全防止の效果が見られたが, 黒變の著しいものに對しては完全にこれを防止する事が出來なかつた。11. 安息香酸メチルエステルの併用はすべての果實に對して黒變防止效果が顯著であつたが猛烈な惡臭 (恐らくは有毒) と藥害のため全く實用には供せられない。12. 醋酸アミル外10藥品は見るべき效果がなかつた。13. 二硫化炭素及アンモニアは寧ろ黒變を助長した。14. アセチリン, 水素混用は效果なく, 硫化水素は效果ある濃度では果實に臭氣があり實用にならなかつた。15. wax emulsion によつて果面を覆ふ事は效果がなかつた。
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