多摩丘陵西部小流域の地質条件と斜面地形
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概要
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多摩丘陵西部の小流域において, 谷頭部の斜面単位および丘腹斜面上にみられる谷頭斜面 (0次谷) の分布と丘陵を構成する地質の関係について検討した。多摩丘陵は, 粘土・シルト層, 砂層, 砂礫層よりなる半固結―未固結の下部更新統上総層群によって, その骨格が構成され, 西部ではそれを中部更新統御殿峠礫層と関東ローム層が不整合に覆う。これらの地層の中で, 上総層群中の粘土・シルト層と関東ローム層下部の古期ローム層は難透水層であり, その上面の砂層, 砂礫層や新期ローム層からなる透水層には地下水が分布している。谷頭の湧水の位置はそうした地層分布に支配され, その影響を受けて谷頭凹地や谷頭平底などの微地形単位 (田村, 1974) が分布している。また丘腹斜面上の谷頭斜面では通常湧水はみられないが, その頭部の位置はいくつかの高度に揃うことが多い。この位置も地層分布によって支配されている。このように丘陵でみられる凹型の断面をもつ斜面単位の分布は, 難透水層が地表にあらわれる位置によって決まっている。谷頭部形成のきっかけとなったのは, 難透水層上面をすべり面とする地すべりであると考えられ, 現在の谷頭はそれをさらに掘り込む形で形成されている。また丘腹斜面上の谷頭斜面は表層崩壊によって形成されたと考えられるが, その形成には土壤中の水の動きだけでなく, 地質条件に支配された地下水の動きも重要な役割を果たしていると考えられる。
- 東北地理学会,農林水産省林業試験場,都立大学理学部の論文
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