食習慣と循環器系疾患(1) : 本邦内陸山間部および沿岸部住民における脳・心血管系疾患死亡率と血中エイコサペンタエン酸・アラキドン酸比

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成人病罹患に食習慣の関与の大なることは周知であり, 魚類多食のエスキモー人が獣肉多食のデンマーク人に比し血栓性疾患発症頻度が極めて低いのは摂取脂肪酸構成の差によるとする Dyerberg らの研究もよく知られている。本邦では筆者らの研究グループにおいて実験的に魚類摂取後, 血中脂肪酸構成が変動し, 止血に要する時間の延長や, その血小板においてアラキドン酸等による凝集を阻止すること等が確かめられた。本邦での疫学的研究データのないことから筆者らは山間部, 沿岸部町村における魚類摂取傾向, 血中脂肪酸構成, 厚生省統計を用いての脳, 心血管系疾患死亡率を比較し, つぎの結果を得た。1) 厚生省統計に分類された脳卒中, 脳梗塞, 脳出血, クモ膜下出血, 虚血性心疾患の5疾患に関して, 千葉, 茨城, 福島, 岩手, 新潟, 島根6県の山間部, 沿岸部町村を抽出し, 男女夫々の標準化死亡比を算出, 沿岸部・山間部を魚摂食量の大・小と見做して両地域でのSMRを比較した。2) 脳梗塞, 脳出血, クモ膜下出血, 脳卒中については1, 2の例外を除き沿岸部SMRは山間部SMRに比し低い傾向にあった。3) 虚血性心疾患においては男で半数の県に, 女で1/3の県において山間部SMRが低値の傾向にあった4) 3県について魚摂食量と血中脂肪酸構成を観察したが, 沿岸部住民では魚摂食量が極めて多いのに対し山間部では極めて少なく, 血中脂肪酸構成も両地域間で大差があり, 沿岸部住民では血中エイコサペンタエン酸含有量が極めて多かった。5) 脳血管系疾患SMRと魚摂食人口の大いさとの間に有意な逆相関がみられた。
日本衛生学会の論文

食習慣と循環器系疾患(1) : 本邦内陸山間部および沿岸部住民における脳・心血管系疾患死亡率と血中エイコサペンタエン酸・アラキドン酸比

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