コバルトによる家兎およびラットの肝遊離細胞における脂肪酸の代謝に及ぼす影響について
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概要
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正常食, 3日間空腹, 3日間空腹+塩化コバルト注射の3群の家兎とラットの肝遊離細胞について, 空腹状態, あるいはコバルト注射が遊離脂肪酸の代謝にどのように影響するかを観察した。空腹ラットの肝細胞では, 標識パルミチン酸のエステル化は正常食ラットに比べて著しく減少したが, ケトン体への酸化の転換総量は増加した。このエステル化の減少はトリグリセライド (TG) と燐脂質の生成の減少によるが, とりわけTGの生成の減少が大きく影響していた。しかしケトン体の生成は空腹によって亢進した。他方, 家兎の肝細胞では脂肪酸のエステル化と酸化は空腹によって殆んど影響されなかった。コバルト注射家兎の肝細胞では標識したパルミチン酸のTGへのエステル化が空腹家兎に比べて亢進した。しかし, コバルト注射ラットの肝細胞ではTGへのエステル化は空腹ラットと差がなかったが, 燐脂質の生成は, 促進し, ケトン体生成は有意に減少した。空腹の家兎では血中のケトン体は顕著に増加したが, コバルト注射によってその増加は抑制された。この家兎の血中のケトン体の変動は, 空腹ラットの肝細胞におけるケトン体生成の増加とコバルト注射によるその増加の抑制というラットの肝細胞の挙動にむしろ近かった。3群の動物の遊離肝細胞を浮遊した培養液にコバルトを加えたところ標識したパルミチン酸のエステル化と酸化の度合には, 添加しないものに比べて, なんらの差がみられなかった。培養液にコバルトを添加すると3群の遊離肝細胞からのTGの放出が抑制されたが, アセト酢酸の放出は阻害されなかった。即ち, 培養液にコバルトを添加しても遊離肝細胞のTGの生成とアセト酢酸の放出には影響しなかったがTGの放出は完全に阻害された。
- 日本衛生学会の論文
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