低酸素環境への適応時における赤血球内2, 3-DPGレベルの変動
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概要
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低酸素環境に対する生体の適応順化反応の一つとして,赤血球内2, 3-DPGレベルの変動が果たす役割について検討した。すなわち,ヒトおよび動物を低圧chamberまたは低酸素ガス吸入によって,低酸素環境に暴露し,その際の赤血球内2, 3-DPGレベルの変化をしらべた。結果を要約すると,次の通りである。1) 健常成人,貧血患者の血液およびACD保存血の2, 3-DPGレベルとP50値との関係をしらべた結果,2, 3-DPGレベルの高いものほど,P50値が大きく,そしてHbの酸素解離曲線の右方移動を示していることを再確認した。2) ヒトおよび動物の種属により,正常環境下における2, 3-DPG濃度に相異があり,また,Hb含有量と2, 3-DPG濃度との間に逆相関があることを認めた。これらのことから,低酸素環境に対する耐性の種属による差が,2, 3-DPGレベルと関係があるのではないかと推測された。3) 低圧chamberによるヒトの急性低酸素環境暴露実験の結果,2, 3-DPGレベルは暴露後,すみやかに上昇した。また,ヒトおよび動物(ウサギ・イヌ)に7日〜14日間にわたり,長期間連続低酸素環境暴露実験を実施した結果,暴露期間中,高い赤血球内2, 3-DPGレベルが維持され,暴露を解除すると,すみやかにそのレベルは低下した。これらの結果から,低酸素環境への適応・順化機序として,従来知られている呼吸・循環機能の亢進,造血機能亢進などと共に,赤血球内の2, 3-DPGレベルの上昇が,酸素欠乏に陥った組織への酸素供給能を高めるための重要な適応順化機序の一つであると考えられた。4) 種々の酸素濃度の低酸素ガスをウサギに吸入させた結果,2, 3-DPGレベルは10%酸素では,ほぼ着実な増加を示すが,これ以下の濃度の酸素では不安定な成績を示した。このことから,2, 3-DPGレベルの増加による低酸素環境への適応の能力には限界があり,約5,500m相当高度より高い高度の低酸素環境において,その効果は期待できないことが示唆された。
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