兵庫県の死体検案書(1986-88)にみられる死因の解析
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概要
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「心疾患」は,「悪性新生物」及び「脳血管疾患」と並び,3大死因として死因統計上注目されており,死因構造の現状把握や,対策のための方針決定,対策の評価の指標として,その動向を正確に把握することが極めて重要である。死因統計の信頼性は医師により記載される死因の正確さに依存しているが,日本には記載の不備や不明瞭な点を確認・訂正するシステムが存在しない。兵庫県には神戸市に監察医制度が施かれ,死体検案は地域により監察医と一般臨床医が分担しているため死体検案書の記載内容を直接比較検討しうる。そこで,昭和61∼63年次の死体検案書の97%を回収し,死因の記載について検討した。監察医は解剖を行って急死所見以外何ら病理的変化が認められなかった場合のみ“原因不明の”『心不全』と診断していたが(全病死の3%),死体検案の目的では解剖を行えない一般臨床医の診断では,2,622例の病死のうち1,707例(65.1%)が『心不全』に分類された。それ以外の病死に分類された検案書でも直接死因として25%に『心不全』の記載があった。無難な診断として『心不全』が好まれていると考えられ,通常の死亡診断においても『心不全』という死因の誤用が推察される。実際に,昭和61年の日本全国の「心疾患」の年齢訂正死亡率(人口10万対)は98.7で「脳血管疾患」(84.2)より高いが,その55%は『心不全』(53.9)が占めており,通常の死亡診断書でも『心不全』のような曖昧な診断名を濫用していることがうかがわれた。死亡診断書そのものの記載を通しての死因統計の見直しとともに死因統計やICDによる死因分類の重要性の啓蒙が必要であると考えられる。
- 日本衛生学会の論文
著者
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西條 清史
神戸大医公衛
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福永 龍繁
滋賀医科大学法医学教室
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味木 和喜子
神戸大医公衛
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味木 和喜子
神戸大学医学部公衆衛生学教室
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西條 清史
神戸大学医学部公衆衛生
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福永 龍繁
滋賀医科大学法医学講座
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