慢性中耳炎の臨床的, 組織学的並びに細菌学的研究 : 特に耳小骨病変並びに組織内細菌について
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概要
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慢性中耳炎の際, 中耳内の耳小骨及び肉芽組織の状態について, さらに炎症の感染及び慢性化に主な役割を持つ細菌の状態について検討した. 対称は1967年10月から1969年2月迄の間に当科に入院手術を施行した患者のうち150耳とした. 耳小骨及びその周囲組織の状態を手術用実体鏡下で, 詳細に観察し, その周囲組織の組織学的所見を検討した. 一方術前の耳漏内細菌及び術中組織内細菌培養との関係, さらに組織学的所見と組織内細菌の関係を検討した.<BR>慢性中耳炎における耳小骨の病変は砧骨, 槌骨. 鐙骨の順で障害されており, 耳小骨の周囲組織が堅い肉芽, 及び浮腫性の肉芽及び真珠腫の場合, 全てに於いて侵されている順位は同等であるが. 堅い肉芽の場合, 健在例が多く, 真珠腫の場合は健在例が少なく, 病変の存在する耳小骨が多い. これは耳小骨周囲の血管の走行. 硝子軟骨の有無, 周囲組織の状態によると考えられる.<BR>術前耳漏内細菌及び鼓室内, 乳突洞内肉芽及び真珠腫の粉砕培養, 耳管内貯留液の細菌培養の100症例の結果では, St. aureus, St. epidermidis, Pseudomonas, Corynebacterium, Proteusら5種の細菌が多く検出された. 術前に菌不検出例では, 術中組織内細菌培養では, いづれも細菌は検出されず, 又組織内細菌染色結果でも細菌が検出されないか, 検出頻度少数例である.<BR>肉芽組織の組織内細菌分布度は上皮より, 固有層深層に行くに従って増加し, 鼓室内肉芽より乳突洞腔肉芽の方が検出頻度が高い. 又血管内皮細胞, テステ壁細胞には細菌が検出されるが. テステ内腔には細菌は存在しない. 真珠腫では, 角化上皮中に著明に細菌が存在し, いわゆる真珠腫塊に細菌が多く, 細菌の生育に好適な場所と推定される.<BR>コレステリン肉芽腫では, コレステリン内には細菌は証明されず, 本肉芽腫は組織学的炎症所見も著明でない.<BR>組織学的所見で炎症が最も強い時は, 組織内細菌の検出頻度は中等度 (+) の場合が多く, 反対に組織内細菌が最も多く検出される時は, 組織の炎症所見は (++) の時が最も多い.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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