慢性中耳炎病巣より分離された緑膿菌のSero-typingによる観察
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概要
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(目的) 慢性中耳炎病巣より手術前に緑膿菌が分離されると, 術後経過が悪い例が多いと言われ, 又, ひとたび緑膿菌が慢性中耳炎病巣に感染すると長い間にわたって緑膿菌が分離される例がある. これらの症例において, 同じ緑膿菌が長くとどまっているのか, 経過の途中で新しく緑膿菌が感染するのか, 又, 緑膿菌のTypeによつて中耳炎の病巣の状態が異るのかを知り, 慢性中耳炎の治療指針を得るために, 緑膿菌の感染巣における動態を知るべく本実験を行った.<BR>(実験方法) 慢性中耳炎患者の術後経過が良好であった症例の術前に分離された緑膿菌, 又, 術後経過の悪かった症例の術前, 術後より分離された緑膿菌, 又, 1人の患者より頻回に分離された緑膿菌についてSero-typingと薬剤感染性検査を行った.<BR>(結果) 1. 当科の慢性中耳炎患者より分離された緑膿菌にはT-5が圧倒的に多かった. 他の血清型は, ほぼ平均していた.<BR>2. これら緑膿菌は抗生剤に対する感受性については, 血清型によって差は認められなかった. 又, 慢性中耳炎手術後の経過良好例と悪化例の両者に分離された緑膿菌について, 抗生剤の感受性には差がなかった.<BR>3. 術前に緑膿菌が分離され, 術後も経過が悪く, 緑膿菌が分離された症例22例中, 術後に術前と同じ血清型の緑膿菌が分離された症例は18例 (81.8%) であった. 又, これら術前, 術後に分離された同じ血清型の菌は各種の抗生剤に対しても, 同じ様なantibiogranを示した.<BR>4. 術前に緑膿菌が分離され, 術後経過が悪く続いて緑膿菌が分離された症例中, 術前, 術後に同じ血清型の緑膿菌が分離された症例は18例で, その内, T-5は11例 (61.6%) であった. 又, 術前に緑膿菌が分離され, 術後経過の良かった症例をat randomに50例選び, その50例中, T-5は15例 (30.0%) であった. この様に術後良好例, 悪化例共に術前菌にT-5が多った.<BR>これらのことから, 術前の感染細菌のTypeや, その抗生剤に対する態度のみが術後経過を決める主要な因子ではないと考えられる. しかし, 術後経過が悪化した症例では, 術創に残した菌が何らかの役割をはたしている場合が多い. 又, 術後悪化を起すのは, 術創に取残された菌種よりも, その残された菌が, どの様な環境に置かれているかと言う問題が重要であると思われる.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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