フォルステライト系耐火物の研究 (第8報) : 添加剤としてCaOを用いた場合のマトリックス部分について
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概要
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第6報でフォルステライト耐火物製造の際の添加剤として, CaOが最も好ましい添加剤であることを述べたが, 本報では, CaOを添加した場合のマトリックス部分の性質を検討する一手段として, 主原料ヂュナイトを焼成した場合のマトリックス部分についての考察を行つた。その結果は, 添加したCaOとヂュナイト中のAl2O3, CaO並びに2FeO・SiO2が分解して遊離の状態となるSiO2の三成分から, CaOの添加量の相異によりCaO-Al2O3-SiO2系の低溶融体が生成されることを仮定した。しかるに, 実際にはフォルステライト耐火物製造に際しては, 20-30%のマグネシアを配合するのが普通であり, このマグネシア中に含まれるCaO, Al2O3, SiO2も当然影響をおよぼすべきであるし, 又大量に共存するフォルステライトと2FeO・SiO2の分解生成物なる酸化鉄等との反応も当然考慮すべきであるが, ヂュナイトを1600℃以上の高温に焼成した場合 (この項に関しては別に報告の予定である) は, フォルステライト結晶は徐々に周辺の融体と反応しで, 結晶の形状が丸味を帯びて熔融の傾向を示してくるが, 通常の耐火物の焼成温度範囲, すなわち1500℃以下では第5報に詳細報告したようにヂュナイト中の鉄分はフォルステライトに固溶されて2FeO・SiO2の形で含有されていたものが分解して, 酸化鉄が遊離し, フォルステライトの結晶周辺に析出する。したがつてフォルステライトは鉄分の浸出の為にその晶結粒が極めて清澄なものとなる以外に変化が認められない。分解したSiO2は他の成分と作用してフォルステライトの晶結の間隙にガラス状で存在する。又R. E. Birchもマグネシア耐火物中の不純物CaO, Al2O3, SiO2がCaO-Al2O3-SiO2系融体を生成し, その性質によつてマグネシア耐火物の性質が左右されることを述べている。これらの諸点を併せ考慮すれば, 実際にフォルステライト耐火物中に生成されるマトリックス部分は, 本報に考慮した融体とは異つた, より複雑なる組織のものであろうが, その主体は耐火物に最も多量配合きれるヂュナイト中に生成される融体に左右されるものと考えられる。すなわち, 添加したCaOがまず第一段階として, 反応の容易なCaO-Al2O3-SiO2系の融体を生成し, ついでより高温にさらされる間に, それらの融体が侵蝕性液体 (Corrosive liquid) として働いて多量に存在するフォルステライト, ペリクレース等と反応していくと考えるべきであるが, これらの詳細に関しては別に報告の予定である。
- 社団法人 日本セラミックス協会の論文
著者
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