高純度亞鉛中の鉛の定量 : 万能発光装置による分光分析法(第5報)
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概要
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前報までにひきつづき,万能発光装置の制御放電を高純度亜鉛の分光分析に適用した結果を報告する.<BR>この分析法は試料をそのまま金属電極とするので,溶液法などに比較して試料調整,発光操作などが簡易迅速であるばかりではなく,熟練を必要とせずまた分析に要する費用も低廉である.<BR>今回は金属亜鉛電極の放電による消耗および酸化物の堆積などに関する基礎的実験を重ね,さらに鉛の定量について,3種類の線対を用い,黒鉛対電極を使用する場合および使用しない場合の種々の実験を行った.<BR>この結果,万能発光装置の強力なアークライクの放電により,Pb=0.0001%に達する感度と良好な精度とを得ることができた.<BR>本報文では,乾板較正の結果などを含めて,以上の詳細を報告する.<BR>本分析法の精度は金属-金属電極の場合よりも金属-黒鉛電極の場合の方がよい.しかしこの場合にはCNバンドのためにPbI3673.5およびPbI4057.8は使用困難でPbI2833.1を使用した.この線は比較的感度が低く,金属-金属電極の場合にはPb=0.002%に過ぎないが,金属-黒鉛電極の場合にはPb=0.0009%に達し一応実用性がある.<BR>さらに高い感度を必要とする場合にはPbI3683.5あるいはPbI4057.8を使用する.この場合にはCNバンドを避ける必要上黒鉛対電極を使用することはできないが,これらの線の感度はPb=0.0005%あるいはPb=0.0001%に達する.また精度も悪くない.<BR>なお精度向上の目的で,前放電時間を延長することは全放電時間が長くなり放電発光の変動が増大するためか,必ずしもその効果を期待できないことが判明した.また今回の実験では金属-金属電極の場合の電極形状は円錐角度=90°,放電面の径=3mmの截頭円錐,金属-黒鉛電極の場合の金属電極は円錐角度=60°,放電面の径=3mmの截頭円錐としたが,Fig.1〜6の結果からあきらかなごとく円錐角度90°以上,放電面の径3mm以上ならば大差を生じない.従って電極形状は円柱状試料電極の一端を平らに切落し,その周縁を軽く縁取りしたものでも同様の結果が得られるはずである.工業分析法としてはこの方が加工が容易である点で優れている.ただしこの場合円柱の径はFig.1〜6の結果から5〜6mm位あった方がよく,また金属-黒鉛電極の場合には放電面をさらに大きくし,いわゆる棒面型電極を構成せしめてもよいと思う.同一形状の電極を一対とする金属-金属電極の場合には,平面の放電面をあまり大きくすることは放電状態の不整および均一照射の点で限度がある.
- 社団法人 日本分析化学会の論文
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