2 溶媒抽出
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概要
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本進歩総説は,1970年および1971年の文献を採用し,溶媒抽出の分野の進歩と今期の傾向についてまとめたものである.今期間に発表された報告は2000編以上に及び,基礎および応用の両面で活発な研究がなされた.個個の元素の抽出挙動を,ある応用目的に検討したものでも,抽出の機構,抽出種の組成や構造をあらかじめ研究するなど,基礎的研究に精力が注がれる傾向がますます強くなってきた.<BR>液-液界面に存在する化学種とその移動の機作や速度,溶質と溶媒分子との相互作用の究明などの物理化学的な研究が急激に増加したのも特徴である.抽出過程における溶媒効果の一般的説明を得るための水溶液と有機溶媒間の化学種の分配平衡に対する正則溶液理論の適用も,引き続き行なわれている.<BR>協同効果の研究もあいかわらず豊富で,その機構や付加錯体の組成,構造の解明,抽出速度を増して抽出効果を上げるための応用などが盛んに行なわれた.<BR>液-液抽出を抽出クロマトグラフィーの方向に発展させる研究,向流分配法で工業的規模で分離濃縮を行なう研究と分離係数の算出に電子計算機を利用する試みなどがみられ,同じく電子計算機を利用してカラムの数学的モデル化を行ない,抽出分離のフローシートを制御し,自動化に結びつけるなど注目すべき研究がなされている.元素別各論の報文数はきわめて多いが,新しい抽出試薬を開発して好結果を得たもの,方法をくふうして選択性や定量感度を上げたものなどが数多く含まれている.<BR>抽出分離ののち,抽出液を諸定量法に供試する応用例は従来どおり多数見られ,吸光光度法,発光,けい光,ポーラログラフィー,赤外線吸収分析,原子吸光分析などの前処理法として効果を上げている.なお,IUPAC分析化学部会命名委員会では,抽出定数,分配比など,抽出の分野で広く使われる用語の定義を明らかにして統一的に用いようと提案しており<SUP>1)</SUP>,また,この分野でたびたび使われる抽出剤の略記号を提案して統一を呼びかけた報文<SUP>2)</SUP>も見られることを付記する.<BR>なお,本稿では試薬類に次のような略号を用いる.<BR>HDEHP:ビス(2-エチルヘキシル)リン酸,DBP:ジブチルリン酸,TBP:トリブチルリン酸,TOPO:トリオクチルホスフィンオキシド,acac:アセチルアセトン,TTA:テノイルトリフルオルアセトン,S-TTA:チオテノイルトリフルオルアセトン,TFA:トリフルオルアセチルアセトン,HFA:ヘキサフルオルアセチルアセトン,H(fod):1,1,1,2,2,3,3-ヘプタフルオル-7,7-ジメチル-4,6-オクタンジオン,TOA:トリ-n-オクチルアミン,DOA:ジ-n-オクチルアミン,TIOA:トリーイソオクチルアミン,TLA:トリラウリルアミン,TLMA:トリラウリルメチルアミン,NBPHA:N-ベンゾイルフェニルヒドロキシルアミン,NBHA:N-ベンゾイルヒドロキシルアミン,DPG:1,3-ジフェニルグアニジン,DEDTC:ジエチルジチオカルバミン酸,PMBP:1-フェニル-3-メチル-4-ベンゾイルピラゾロン-5,PHA:フェニルヒドロキシルアミン,TPAC:テトラフェニルアルソニウムクロリド,PAR:4-(2-ピリジルアゾ)-レゾルシノール,RAN:1-(2-ピリジルアゾ)-2-ナフトール,TAR:4-(2-チアゾイルアゾ)-レゾルシノール,DTAD:1,4-ジメチル-1,2,4-トリアゾニウム-(3-アゾ-4)N-N-ジエチルアニリン,HBA:ベンゾイルアセトン,EDTA:エチレンジアミン四酢酸.
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