ネパール・ヒマラヤの夏期涵養型氷河における質量収支の特性I : 東ネパールAX010氷河の質量収支
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概要
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ネパール・ヒマラヤの氷河の年間酒涵量の大部分は夏のモンスーンの降水でもたらされる。このように冬半年より夏半年に涵養量の多い氷河は, アジア大陸に広く分布しているので, これを夏期涵養型氷河とよび, その典型としてショロン地域のAX010氷河 (面積0.57km<SUP>2</SUP>) の質量収支と気象条件の関係を調べた.このような氷河は, 涵養と消粍が同時におこり, 両方を個別に実測できない.そこで夏の観測結果から, 固体降水の出現率と地上気温との関係をえて涵養量を見積り, 実測した収支量との差から消粍量が算出され, すでに報告されている.本論文ではその結果をもちいて, 半月毎の平均気温<I>T</I><SUB>n</SUB> (℃) と降水量<I>P</I><SUB>n</SUB> (cm) から, その期問の涵養量 (固体降水量) cn, 消粍量an (いずれもcm) を求める次式をえた.cn=<I>P</I><SUB>n</SUB> (0.85-0.24<I>T</I><SUB>n</SUB>) ……-0.6≦<I>T</I><SUB>n</SUB>≦3.5, an=-0.15 (<I>T</I><SUB>n</SUB>+3.0) <SUP>3.2</SUP>…-3.0≦<I>T</I><SUB>n</SUB>.また, 夏期 (6月〜9月) の平均気温と降水量から, 同期の涵養量, 消粍量, 収支を算定する式をえた.そして, 気温の高度による減率0.6℃/100mをもちいて氷河全体の質量収支を算出した。その結果, 降水量は一定のまま夏の平均気温が高くなった場合, 消粍量の増加に涵養量の減少が重なって収支は大きく減少すること, 涵養量より消粍量の変化が大きく, その傾向は高温域ほど強いことがわかった.また, 通年の<I>T</I><SUB>n</SUB>と<I>P</I><SUB>n</SUB>を上記の式にあたえて氷河全域の平均収支の年変化パターンをしめし, 気温が年々変化した場合の影響を調べた。その結果年間のうち冬期間は, 涵養, 消耗とも少なくて収支は平衡に近く, 一方夏期の収支の正負は気温の変化に敏感で一定しないことを示した.そのため, 質量収支の観測には, 層位学的システムより確定日付システムの方が合理的であることをのべた.
- 社団法人 日本雪氷学会の論文
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