ネパール・ヒマラヤの夏期涵養型氷河における質量収支の特性II : ネパールの小型氷河の質量収支モデル
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
第1報で, 夏期涵養型である (涵養量が冬半年より夏半年に多い) 東ネパールのAX010氷河での観測結果から, 半月毎の平均気温 (<I>T</I><SUB>h</SUB>) と降水量 (<I>P</I><SUB>h</SUB>) をもちいて同期の涵養量, 消耗量, 収支の算定式をえた.この論文では, これらの式に通年の<I>T</I><SUB>h</SUB>と<I>P</I><SUB>h</SUB>の値を, いろいろな年平均気温と年降水量の場合についてあてはめ, 収支各要素の通年の値を算出した.そして, ネパールではモンスーンの影響に地域差が大きいので, 年降水量のちがう各地の氷河における質量収支の高度分布を高度による気温差を指標にして示した.その結果, 次のことがわかった.1) 涵養量は, 夏期平均気温が約-1℃以下の高所では降水量と等しく, 約3℃以上の低所までは夏期降水量にしめる固体降水量の比率が気温に依存してほぼ直線的に減少する.2) 消耗量は高温な低所ほど急増し, 収支の高度分布も主に消耗量の変化を反映して低所ほど大きく変化する.3) 平衡線の高度は, 年降水量が少ない場合ほど急な上昇をみせる.<BR>さらに, ネパールの氷河を地球上の他地域の氷河と比較し, 夏期涵養型氷河は比較的交換量が少なく低温域に位置するが, 平衡線付近での年間収支の高度による変化率 (activity index) は海洋性氷河の傾向に近づくことがわかった.また, 氷河全体の質量, 年間交換量, 年間収支をくみあわせた活動度をもちいて, 地球上各地における氷河と気候の関係, 変動の傾向などを表現できることをしめした.
- 社団法人 日本雪氷学会の論文
著者
関連論文
- ネパール・ヒマラヤの夏期涵養型氷河における質量収支の特性I : 東ネパールAX010氷河の質量収支
- ネパール・ヒマラヤの夏期涵養型氷河における質量収支の特性II : ネパールの小型氷河の質量収支モデル
- 大山の越年雪
- 総合報告-日本における雪渓の地域的特性とその変動