ラット実験的歯周炎におけるアレンドロネートの歯槽骨吸収抑制作用
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概要
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ビスフォスフォネート製剤の一つであるアレンドロネートは強力な骨吸収抑制作用をもつことから骨粗鬆症等の臨床に応用されており, 歯周病に対する効果も期待できる。今回, 我々はラット実験的歯周炎におけるアレンドロネートの歯槽骨吸収抑制効果について形態学的な検索を行った。歯槽骨吸収を伴う歯周炎を惹起させる目的で, 8週齢ウィスター雄性ラット上顎右側第二臼歯の歯頚部にナイロン糸による結紮を行った。実験群は非結紮対照群 (非結紮+生理食塩水), 対照群 (結紮+生理食塩水), 低濃度群 (結紮+アレンドロネート0.01mg/kg), 高濃度群 (結紮+アレンドロネート0.1mg/kg) の4群とし, 薬剤は2日毎に皮下注射により投与した。実験5, 10, 20日目に上顎骨を採取し, マイクロCTにより3次元画像を構築し, 第二臼歯近心根の歯槽骨吸収について画像解析を行った。その後, 脱灰薄切切片を作成し, 破骨細胞の指標となる酒石酸抵抗性酸性フォスファターゼ (TRAP) 染色を行い, 光学顕微鏡下で観察した。マイクロCT解析の結果, 非結紮対照群では歯槽骨に何ら変化はなく, 結紮した3群では歯槽骨吸収が実験5〜20日目に認められた。一方, アレンドロネート投与群では歯槽骨吸収は5日目から対照群と比較して有意に抑制され, 10日目および20日目においても抑制が認められた。組織切片分析では, 結紮によって起こった歯周結合組織, 歯槽骨を含む歯周組織の破壊が5日目に認められた。結紮した3群ではTRAP陽性破骨細胞が5日目で確認されたが, 10日目では確認されなかった。5日目における破骨細胞数は, 対照群と比較して低濃度, 高濃度群で有意差が認めらず, 10日目にはすべての群で破骨細胞が消失していた。これらの結果から, アレンドロネートは破骨細胞の数に影響を及ぼさずに, 破骨細胞の機能を抑制することにより歯槽骨吸収を抑制することが示唆された。以上より, 歯周病による歯槽骨吸収の予防にアレンドロネート摂取が有効である可能性が示された。
著者
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和田 智恵
徳島大学大学院歯学研究科歯周歯内治療学分野
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永田 俊彦
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部 歯周歯内治療学分野
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瀬戸 浩行
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部再生修復医歯学部門顎口腔病態制御学講座歯周歯内治療学分野
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堀部 ますみ
徳島大学大学院·ヘルスバイオサイエンス研究部·再生修復医歯学部門·顎口腔病態制御学講座·歯周歯内治療学分野
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瀬戸 浩行
徳島大学大学院·ヘルスバイオサイエンス研究部·再生修復医歯学部門·顎口腔病態制御学講座·歯周歯内治療学分野
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永田 俊彦
徳島大学大学院·ヘルスバイオサイエンス研究部·再生修復医歯学部門·顎口腔病態制御学講座·歯周歯内治療学分野
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和田 智恵
徳島大学大学院·ヘルスバイオサイエンス研究部·再生修復医歯学部門·顎口腔病態制御学講座·歯周歯内治療学分野
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