Heat strokeに合併した急性腎不全の1例
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概要
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Heat strokeは,異常高体温により全身の臓器障害を呈する,非常に重篤な疾患で,致死率は10〜70%と報告されている.諸外国では一夏に数百〜数千の犠牲者が報告されているが,気候の温和な我国ではその数は極めて少なく, 4例の症例報告があるのみで,うち2例は死亡,他の2例は比較的軽症例である.今回我々は,多彩な合併症を伴う重症のheat strokeの1例を救命し得たので報告する. 15才,男性.炎天下で7時間のラグビー練習後倒れ, 30分後より不穏状態出現.脈拍178/min,血圧60/0mmHg.瞳孔散大.対光反射消失.直腸温は42.7°Cまで上昇し, ice blanketによる体外冷却にて3時間後, 37.0°Cまで低下した.以後,急性腎不全,播種性血管内凝固症候群,重症肝障害,敗血症などが次々に出現した.急性腎不全に対しては腹膜潅流,血液透析にて治療し,第54病日に利尿期に入つた.第82病日に行なつた腎生検では,糸球体に著変なく,尿細管は散在性に拡張し,尿細管上皮の脱落,扁平化がみられ,急性尿細管壊死の回復期と診断した. Heat strokeにおける急性腎不全は,予後を左右する重篤な合併症で,その機序として,熱の腎への直接作用, rhabdomyolysisによるmyoglobinuria, shock,脱水,運動などがあげられている.乏尿期は6〜30日と報告されているが,本例では54日に及んだ.その理由として,前述の種々の病態に加え,播種性血管内凝固症候群,敗血症,抗生物質の大量長期投与などが尿細管上皮の再生を遅らせたためと考えられた.
- 社団法人 日本内科学会の論文
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