59才男子に発症した肺原発絨毛癌の1例
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概要
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症例, 59才の男性で,昭和54年8月,女性化乳房が出現,肺癌が疑われて同年10月当科入院.胸部X線写真では左上肺野に大腫瘤陰影,両側肺野に多数の円形陰影が認められた.血清hCGが高値を呈したことからhCG産生肺癌の診断で抗癌薬多薬併用療法(METT)を行なつたが,効果なく1カ月で死亡した.剖検では左肺上葉に原発巣と思われる小児頭大の腫瘤があり,肺,肝,腎,胃, S状結腸,右腸腰筋,前立腺,脳に転移を認めた.組織学的には,原発巣および転移巣は著明な出血,壊死を伴い, Syncytium様細胞とLanghans様細胞よりなる2種類の細胞パターンを呈した.また免疫化学的に腫瘍細胞内にhCGが証明され,血清,胸水,腫瘍組織のhCGは,それぞれ15800mIU/m1, 3100mIU/ml, 60800mIU/g wet tissueであつた.血清中のestrogen, progesterone, hPLも上昇し,腫瘍抽出液をSephadex G-100によつてゲル〓過した検査結果から,本腫瘍がauthentic hCGの他に,そのサブユニットであるfree hCG-α, hCG-βを産生し,かつ各サブユニットの大きさが異なることが分つた.生殖腺外原発絨毛癌はきわめて希な疾患で,中でも肺原発の例は今までに数例しか報告されていない.その診断基準や組織発生については諸説があり,今後症例を積み重ねて検討する必要がある.
- 社団法人 日本内科学会の論文
著者
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西村 隆一郎
神戸大学医学部産科婦人科学教室
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中村 稔
九州大学医学部第一内科
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梶山 憲治
九州大学医学部
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丸山 俊博
九州大学医学部第一内科
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井上 定三
九州大学医学部第一病理
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梶山 憲治
九州大学医学部第一内科
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西村 隆一郎
神戸大学医学部産婦人科
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井上 定三
九州大学医学部 第一病理
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