肝硬変に続発した乳び腹水の1剖検例特にリンパ管造影所見および腹水中リポ蛋白について
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概要
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肝硬変以外に腫瘍や炎症などの要因なく,乳び腹水を続発した症例を経験したので報告する.症例は50才の男性で,既往に昭和30年肺結核による肺切除術後の輸血後肝炎がある.昭和56年11月,腹水貯留を主訴として入院した.症状および検査成績より肝硬変の非代償期と診断し,安静,減塩高蛋白食および利尿薬投与にて腹水は,一時消失したが,入院12週頃より再貯留し,利尿薬に反応せず,腹水は乳様混濁を呈してきた.腹水中のトリグリセライドは著しく増加し,血清値より高値で,トリグリセライド/コレステロール比は高く,超遠心法を用いた蛋白分析では比重1.006以下の分画が著増していた.リンパ管造影では,乳び槽近くでの不完全閉塞を思わせる所見が得られたが,剖検ではリンパ路の異常は認められなかつた.乳び腹水中の比重1.006以下のリポ蛋白分画のpolyacrylamide gel electrophoresisによるアポリポ蛋白分析では,腸管由来のアポB48とともに肝由来のアポB100,アポB26を認めた.また乳び腹水中のアポA定量では,アポAI 10.6mg/dl,アポAII 1.3mg/dlの値を得,アポAI/AII比は正常血清と比べ上昇していた.われわれの知る限り,本症例は肝硬変に続発した乳び腹水のアポリポ蛋白分析を行なつた最初の報告例である.
著者
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