異所性adrenocorticotropic hormone (ACTH), melanocyte stimmulating hormone (MSH), calcitonin (CT)産生を伴つたSipple症候群の1例
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概要
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14年間糖尿病でインスリン治療を受けていた58才の患者が,特別な前駆症状もなく麻痺性腸閉塞,高血糖ケトーシスで緊急入院し,間もなくショック症状となり盲腸〓造成術を行なつたが,術後急性腎不全を併発し死亡した.死亡直前に褐色細胞腫の合併が診断されたが,種々の治療に奏効せず不幸な転帰をとつた.剖検の結果,両側副腎に巨大な褐色細胞腫が存在したほかに,甲状腺髄様癌(MCT)が認められ,典型的なSipple症候群であつたことが確認された.内分泌検査で血中カルチトニン(CT) 12ng/m1, ACTH 305pg/m1, β-MSH 600pg/mlといずれも高値を示し,さらに腫瘍組織中の各種ホルモンを測定した結果, MCT組織中にCT 1.8mg/wet g, ACTH 9.9ng/wet g, β-MSH 57.1ng/wet gまた,褐色細胞腫からもCT 215.8ng/wet g, ACTH 617ng/wet g, β-MSH 500ng/wet gの存在が証明された.一方蛍光抗体法でMCT組織中にCT抗体とACTH抗体に,褐色細胞腫組織中にもCT抗体に反応する陽性細胞が認められた.従つて,本症は異所性ACTH, β-MSH産生甲状腺髄様癌に異所性CT, ACTR, β-MSH産生褐色細胞腫を合併した非常に興味深い症例であつた.なお,生存中の家族についてCa負荷試験等で検索したところ,患者の次女にCTの異常反応が認められ甲状腺全摘術で両側葉に2〜3mm大の微小MCTが発見され,術後3年を経過した現在まで再発,転移の所見は認められず健在である.
著者
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田中 直史
新潟市民病院第2内科
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田中 直史
新潟市民内分泌代謝科
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阿部 薫
国立ガンセンター・内分泌
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山田 彬
新潟市民病院内科
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荒木 淑彦
新潟市民病院病理部
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安達 勇
国立ガンセンター内分泌
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亀谷 徹
国立ガンセンター病理部
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田中 直史
新潟市民病院内科
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阿部 薫
国立ガンセンター内分泌
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