急性ビールス性肝炎の電子顕徴鏡的観察とその胆汁うつ滞型について
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概要
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急性ビールス性肝炎68例に88回の肝生検を行ない,光学顕微鏡並びに電子顕微鏡的検索を行なつた.その結果,小葉内胆栓で表わされる肝内胆汁うつ滞像は臨床的な黄疸と密接に関連していると思われた.黄疸発生機序に関しては電子顕微鏡的に,胆汁うつ滞型のビールス性肝炎では毛細胆管とDisse腔の交通による胆汁の逆流が,また典型的な肝炎では肝細胞膜部分的欠損による胆色素の漏出が,黄疸発生の主体をなすと考えられる所見があつた.ビールス性肝炎の微細構造の変化では,早期よりの小胞体の変化が,諸々の肝機能変化と関連が深く,また肝細胞膜部分的欠損はトランスアミナーゼ等の血中逸脱酵素の増加を説明する形態学的根拠となると思われた.ビールス性肝炎の胆汁うつ滞型は,組織学的に全症例の1/3をしめ,典型的な肝炎に比し血清ビリルビン,アルカリ性フォスファターゼ,コレステロール値高く,トランスアミナーゼの低い血液化学的所見を示し,電子顕微鏡的には,同型の主病変は毛細胆管及びそのMicrovilliの変化にあると考えられた.この変化は肝外閉塞性黄疸時の電顕所見と類似しているが,病因的には肝外性のものと異なり,一次的な変化と考える.なおこの型の肝炎の肝内閉塞機転を説明する一つの形態学的根拠として,毛細胆管に面した肝細胞原形質或はMicrovilliの膨出による毛細胆管の閉塞があげられる.
- 社団法人 日本内科学会の論文