オメガトロンのイオン散逸防止の新しい方法
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概要
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簡易形のオメガトロンの特性を改善し、安定な動作をさせるために、電極構造に変更を加えた管球が製作され、特性が調べられた。分析室の両側面の電極板に数ボルトから十数ボルトの電位を加えることによって、従来の方法では困難であった電子ビーム領域のイオンの散逸防止が有効になされ、感度の増大がもたらされた。さらにこの電位の適用によってイオンの捕集確率が1に近づき、感度特性に飽和の傾向が認められた。これは定量分析に有利な特性である。<BR>新らしい散逸防止電圧は分解能の見地からも望ましいことが判明した。一般に管内に生じた定常電界はサイクロトロン共振周波数を移動させるので、散逸防止電圧に二よって分解能は悪化する傾向があるが、新らしい方法は.悪化の度合いがわずかであるので、感度を落さずた高分解能を得ることが可能となった。ふつうの証整で約30の分解能が得られ、質量数1〜32の気体は、お互いに完全に分離することができる。また最適状態に訳整することによって、やや感度を落せば40以上の分解能を得ることもできる。<BR>従来オメガトロンの不安定性は電極の河染と結びつけて考えられてきたが、実際には不安定性の大部分は、電子ビーム領域のイオンの散逸に責任があるように思われる。我々は電極材料に非磁性ステンレス板を使用したが、イオンの散逸防止が効果的になされていることもあって、特性はかなり安定している。電極の汚染に関しでは長期にわたって数多くの管球を調べてみないと、はっきりしたことがいえないので、今後も注意していきたいと思うが、現在のところ油の物理吸着以外の汚染で動作;が不良になった経験はない。<BR>我々のオメガトロンは、感度の点でも分解能の点でもguard ringを持った複雑な構造の管球に充分匹敵しているように思われる。具体的にguard ringによる性能の向上が発表された例は見当らないし、管球の構造や電位この加え方が複雑化するのは好ましくないから、今のところguard ringつきのものを製作する意志はない。<BR>最少検知可能分圧は、イオン電流検出用の微少電流計の感度と、レスポンスから決定する。管球の感度はだいたい5 (Torr<SUP>-1</SUP>) であるので、検出可能電流を1×10<SUP>-15</SUP>Aとすると、電子電流2μAの時、1×10<SUP>-10</SUP>Torrの検出ができる。なお我々は現在、管球の構造の一部について特許申請中である。
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