慢性腎不全患者での血漿中硫化水素濃度の測定
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概要
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危険な有毒ガスとして知られる硫化水素がヒト体内でもシステインからcystathionine β-synthase(CBS)やcystathionine γlyase(CSE)により産生されることが知られている.この物質は神経伝達物質や血管作動性物質としての働きが認められ,第3のガス状メディエーターとして認識されつつある.しかし,血液中硫化水素の濃度測定は低濃度であり干渉する物質の存在のため難しく臨床的研究は数少ない.一方,腎不全では含硫アミノ酸代謝異常がおこりシステインや亜硫酸などの硫黄化合物が血中に上昇することが知られている.われわれは透析患者において硫化水素代謝異常の可能性を推測し,高速液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography:HPLC)を用いたSavage法にて日本人透析患者の血中硫化水素濃度を測定した.液中に添加された硫化水素を経時的に計測してみると,純水中や血漿中の硫化水素は経時的に減少した.血液中の硫化水素はそれらよりさらに急速に失われる傾向があることから,血中の硫化水素濃度測定には採血後に迅速な処理が必要であることが明らかとなった.血漿中の硫化水素濃度は透析患者においては正常者血中濃度よりも有意に上昇していた.さらに,血漿中硫化水素濃度は慢性糸球体腎炎群に比較して糖尿病群で有意に低かった.そして,単回の透析治療により透析前に上昇している血中硫化水素濃度は正常血清レベル以下まで低下した.また,透析治療中の透析排液中に硫化水素が検出された.これらのことから透析患者では硫化水素産生能亢進または消去能低下のため硫化水素が恒常的に血液中に増加しており透析により除去されることがわかった.
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