ピタバスタチンの多面的作用としての腎保護作用 : ―CKDモデルラットにおける検討―
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概要
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Chronic kidney disease(CKD)の治療に,スタチンの腎保護作用が注目されている.スタチンは主作用の血清コレステロール低下と独立して腎保護的に働く多面的作用を有するが,各スタチン間の差は明らかではない点が多い.本邦で開発された強力なコレステロール低下作用を有するピタバスタチンの多面的作用としての腎保護作用を検討した.スタチンはラットではコレステロール低下を示さないため,コレステロール低下作用を介さない腎保護効果の検討が可能である.CKDモデルとして左腎臓2/3と右全腎臓を摘出して5/6腎臓摘出ラットを作成し,スタチン群(ピタバスタチン3mg/kg/day)と非スタチン群に割り振り12週間観察した.非スタチン群とスタチン群で食事摂取,体重,および血清脂質の差を認めなかったが,スタチン群は血清クレアチニン値(1.1±0.8 vs. 1.9±0.7mg/dl),尿蛋白量(175±45 vs. 273±35mg/ml・Cre),尿アルブミン量(968±95 vs. 1483±214μg/ml・Cre)が低値,クレアチニンクリアランス(23±7 vs. 13±4ml/min/g)が高値であった.残腎の組織学的所見ではスタチン群は糸球体硬化指数(2.5±0.4 vs. 3.2±0.4)と間質線維化度(24.3±3.8 vs. 34.8±5.8)の改善を認めた.Quantitative real-time PCR法による検討では非スタチン群で認められたtransforming growth factor-beta (TGF-β)とconnective tissue growth factor (CTGF)の過剰発現がスタチン群では抑制された(TGF-β:1.52±0.33 vs. 2.32±0.56,CTGF:1.32±0.34 vs. 2.16±0.52).組織学的所見と血清クレアチニン値,クレアチニンクリアランス,尿蛋白量,尿アルブミン量は有意な相関を示し(r=0.684〜0.913クレアチニンクリアランスのみ負の相関),TGF-β,CTGF mRNAの間にも相関を認めた(r=0.469〜0.690).5/6腎臓摘出ラットにおいてピタバスタチンは血清脂質の変動を伴わない腎保護作用を示し,TGF-βとCTGFの過剰発現是正を介した糸球体硬化と間質線維化の抑制による効果であることを示している.
著者
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平野 勉
昭和大学医学部第一内科・糖尿病代謝内科
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平野 勉
昭和大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科
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森 雄作
昭和大学医学部内科学講座糖尿病代謝内分泌部門
-
李 相翔
昭和大学医学部糖尿病・代謝・内分泌内科
-
森田 亮
昭和大学医学部糖尿病・代謝・内分泌内科
-
平野 勉
昭和大学医学部内科学講座糖尿病代謝内分泌部門
-
平野 勉
昭和大学医学部内科学教室(糖尿病・代謝・内分泌内科学部門)
-
森田 亮
昭和大学医学部内科学講座糖尿病代謝内分泌部門
-
李 相翔
昭和大学医学部内科学講座糖尿病代謝内分泌部門
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