頸性眩暈症発現に関する臨床的研究
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概要
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研究目的:頸性眩暈はBarre,Maspetiolらによつて,頸性の障害に起因して惹起されるめまいが報告されていらい,最近,とくに神経耳科学領域において注目をあびてきている.しかしながら本症の原因については諸説がありいまだ明らかにされていない.本研究では,本症と非頸性眩暈と比較検討をおこない本症の特徴を浮き堀りにするとともに本症の発生機序について推論した.研究方法:研究対象は,昭和43年5月より,昭和47年4月までの4年間に日本医科大学附属病院耳鼻咽喉科めまい外来を受診した患者のうち,頸部レントゲン写真像,および上腕動脈経由逆行性椎骨動脈撮影像で頸都に異常をみとめたものを,I項部のOssification,II頸椎の骨棘形成,III頸椎の変形,IV頸椎の癒合,V頸椎推間の狭小,VI椎骨動脈障害の6群に分類し対象とし,また比較対照としては,頸部レントゲン写真像および上腕動脈経由逆行性椎骨動脈撮影像で異常をみとめなかつためまい患者をもちい,年令分布,めまいの性質,四肢平衡機能検査,眼振検査,眼運動系の検査(視運動性眼振検査,視標追跡検査),温度眼振検査について比較検討した.研究結果:頸部障害者のめまいの性質は,回転感を訴えるものが多くみられ,四肢平衡機能検査では,対照群にくらべてRomberg陽性率が高かつた.足踏検査は偏倚をみたものはほぼ同率であつたがStaggeringをみたものは圧倒的に高率であつた.結局,四肢平衡機能検査では対照群にくらべて頸部障害のすべての群が異常出現率が高かつた.眼振検査では注視眼振出現率は対照群より低くかつた反面,頭位眼振,頭位変換眼振の出現率は高かつた.とくに椎骨動脈障害群では眼振出現率が高く,頭位眼振,頭位変換眼振各検査の重要性を証明し得た.視運動性眼振検査で中枢障害型を示すものが対照群にくらべて多かつた.とくに椎骨動脈障害,頸部の運動障害をみるものに多かつた.視標追跡検査では頸部障害のすべての群が対照群にくらべて異常出現率が高かつた.頸性眩暈の発生機序に関して文献的考察を加えるとともに,頸部の障害とくにながい年月にわたつて行なわれてきた頸部の運動による椎骨動脈の血流障害によつて,その血流域である脳幹および小脳になんらかの影響をあたえた結果であろうと推論した.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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