小脳の視運動性眼振に与える影響に関する実験的研究
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概要
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1)小脳は眼運動系に対して調節的役割を果しているとされているが,その詳しい様式は明らかでない.現在神経耳科学的検査法の一つとして用いられている視運動性眼振と小脳との関連を検討するため,猫を用いて一側室頂核に室位的に損傷を与えてその視運動性眼振に対する影響を観察した.2)猫に塩酸メタンフェタミンを投与して覚醒レベルを保持し又猫の固定箱を考案して眼振記録を行なつた.視運動刺激にはバネ式回転ドラムを使用した.実験終了後組織学的検索を行ない破壊巣の確認を行なつた.3)覚醒状態にある猫の視運動性眼振は極めて良好に解発され,安定した指標として扱うことが出来た.術後の視運動性眼振は全てにdefectiveであつた.15例中11例に左右差を認めた.健側向き方向優位性(DP)を示すもの,又術側向きを示すもの,又健側向き振幅がより大きく頻度は小さいパターンを示すもの,の三群に分かれた.損傷部位からみると室頂核を主破壊巣とするものは健側向きDPを示し,小脳小節又はこれを含む破壊をみたものは患側向きDPを示した.視運動性眼振が優位に解発される方向(DP方向)への眼振が刺激中断後も消失せずに解発が延長する例がみられた.又異常な自発眼球運動を生ずる例がみられた,惹起された視運動性眼振のDPと前庭性眼振のDPの方向は一致した.著者は片側室頂核,小節周辺の破壊は視運動性眼振に対して左右を惹きおこすものであり,おそらく前庭神経核を介する調節回路の破綻によるものと推察した.又正常時室頂核及び小節はOKNの円滑な解発を促すと共に,固視機能を調節するものであると考えられた.
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