外傷性顔神麻痺に対する神経管開放術の筋機能に関する遠隔成績
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概要
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外傷性顔神経麻痺に対する神経管開放術の有用性は既に定説化しているが,その筋機能の回復に関しての遠隔成績については比較的に検討されていないように思われる.そこで術後2年以上を経過し,その治癒過程が完了したと考えられる6症例について,主に筋機能に関して検討し,更に術前•術中所見と比較検討してみた所次のような結果を得た.1) 前頭筋•口輪筋•眼輪筋の3つの筋についてそれぞれの回復状態を調べた所,全症例に略満足すべき回復を認めた.回復の初徴は術後2日目から認められたものや1ヶ月後にも全く認められず2年以上経過した時点での検査では略完全に回復していたものまで色々であつた.三つの筋の中では前頭筋の回復状態が最も悪かつた.2) 顔面筋全体の総合的機能である表情機能について検討した所その成績は予想以上に悪かつた.閉眼で口角の運動が生ずるといつたsynkinesis movementが5/6症例に,笑顔を作ると左右非対称になる例が3/6症例に,又チック様の顔面筋痙攣が2/6症例に認められた.3) 術前後のEMG所見,術中NET所見と最終的な回復状態とを比較検討した結果,synkinesismovementは従来説明されていたような再生軸索のmisdirectionやbranchingのみで説明不能であり,その一つの原因としてephaptic conduction接触伝導という考え方を提唱した.4) 顔面筋金体としての正常な表情機能まで回復させる為には,その諸臨床検査成績が,例え部分麻痺といつたものであつても,麻痺発症後出来るだけ早期に顔神管開放術を施行すべきであると考える.
- 社団法人 日本耳鼻咽喉科学会の論文
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