Isosorbide 5-mononitrateの心機能並びに血行動態におよぼす影響(I) : 特に左心系に対する作用
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概要
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isosorbide dinitrate(ISDN)の生体内主要活性代謝物であるisosorbide 5-mononitrate(5-ISMN)の心機能ならびに血行動態におよぼす影響を塩酸ベラバミルおよび塩酸プロプラノロールと比較検討した.またISDNと5-ISMNの効力の比較についても検討を加えた.麻酔開胸犬を用いた実験で,5-ISMN 1 mg/kgおよび3 mg/kgを静脈内に投与すると,心筋収縮力(CCF)および心拍数(HR)はわずかに減少する傾向にとどまったが,収縮期血圧(SBP)は用量に依存して低下し,左心室内圧(LVP)および左心室内圧変化率(LVdp/dt)は著明に減少し,左心室内拡張終期圧(LVEDP)も有意(P<0.05)に減少した.一方,塩酸ベラパミル0.3 mg/kgを静脈内に投与すると,拡張期血圧(DBP)は著明に低下し,HR,CCF,LVPおよびLVdp/dtも有意(P≤0.05)に減少したが,LVEDPはむしろ上昇する傾向を示した.また,塩酸プロプラノロール0.5 mg/kgの静脈内投与では,全身血圧およびLVPはほとんど変化せず,HR,CCFおよびLVdp/dtは著明に減少したが,LVEDPは上昇する傾向を示した.5-ISMNの薬理作用の活性をISDNのそれと比較すると,ウサギの摘出胸部大動脈のノルエピネフリン収縮に対する弛緩作用を指標とした場合は約1/150の活性であったが,麻酔閉胸犬での静脈内投与による脈圧減少作用を指標とした場合は1/4の活性であり,また無麻酔犬の経口投与による脈圧減少作用を指標とした場合は1/1.6の活性であった.以上の成績から,5-ISMNは特に経口投与した場合,ISDNとほぼ同等の活性を有し,生物学的利用率が良好であることが推察され,また狭心症発作時には一過性の左室不全を生ずることを考慮すると,5-ISMNの経口剤は狭心症の治療薬として有用と思われる.
- 社団法人 日本薬理学会の論文
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